研究概要 |
1.B型肝炎ウイルス(HBV)ゲノムを12個タンデムにもつコスミドをヒト胎盤由来のFL細胞株へ導入して, HBs抗原・HBe抗原の高度産生を得たが, 培養3ヶ月目には両抗原の産生が著減した. S1法によるmRNAの検討で, 上記の両抗原をコードするmRNA以外にX遺伝子のmRNAと新しい1.2キロベースのmRNAが検出された. HBVゲノムは1ヶ月目には細胞あたり16コピーであったが3ヶ月目には4コピーに低下していた. さらに同じコスミドをヒトHeLa細胞へ導入した場合にも, 上記の例ほど高くはないがHBs抗原・HBe抗原が検出された. 従って, マルチインサートコスミド法がHBs抗原だけでなく, 従来ほとんど報告されなかったHBs抗原以外の遺伝子産物を効率よく発現すること, しかしFL細胞の場合には導入されたHBVDNAのコピー数減少に伴って発現量の低下が起ったことが明らかとなった. 本方法は方法的には確立され, 応用段階に入ったと言える. 2.同じコスミドをNIH3T3細胞に導入し, トランスホーム活性を検討したが, 現在のところ活性は検出されていない. 我々の別の発現系により, 一部のHBV遺伝子は種特異的に転写され, げっ歯類の細胞でほとんど発現しないことが分ったため, 今後は外来プロモーターを用いた個別遺伝子を高度発現するコスミドを用いて検討する必要がある. 3.転写のトランス活性化能が報告されているX遺伝子を高度発現できるコスミドを作成するため, 使い易いカセットプラズミドを作成した. これを用いて, SV40初期プロモーターからX遺伝子を発現する転写単位を25個持つコスミドの作成に成功した. 今後このコスミドを用いて, X遺伝子のトランスホーム活性を検討する. 備品として購入したビーズウォッシャーは, HBs抗原・HBe抗原の検出・定量に用いられた.
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