研究概要 |
GーCSF(顆粒球コロニー刺激因子)は顆粒球の前駆細胞に作用し, その増殖と分化を促進する因子である. 本研究代表者らは, これまでにGーCSFを構成的に産生するヒトやマウスのがん細胞(CHUー2,NFSA細胞)より, ヒトマウスGーCSF cDNAを単離した. そこで本年度は, これらGーCSF cDNAを用いて, 染色体遺伝子ライブラリーよりそれらの染色体遺伝子を単離し, その構造を決定した. GーCSF遺伝子は, ヒト, マウスともに全長約2,5kbであり, 5個のエクソンから成り立っている. ヒトとマウスの遺伝子間においては, そのエクソン部分は72,6%の相同性を示し, さらに, そのプロモーター領域300bpでは, 互いに80%以上の相同性を持っている. また, ヒトーマウスハイブリッド細胞, FACSによる染色体の分別化, 及びin situハイブリダイゼーション法により, ヒトGーCSF遺伝子は, 17番目の染色体q21ー22の領域に, 存在することを示した. さらに, マウスの種によって遺伝子上にpolymorphysmが存在することを利用し, マウスGーCSFは11番目の染色体55ー57の領域に存在することを明らかとした. 一方, GーCSFを構成的に発現するヒトがん細胞(CHUー2)より, GーCSF遺伝子を単離し, 解析したところ, その構造は正常細胞の遺伝子と同等であった. そこで, マウスGーCSF染色体遺伝子をpSV2neoとともにCSF産生細胞(CHUー2), 並びに非産生細胞(HeLa,FL)に導入し, G418耐性株を樹立したところ, ヒトGーCSF産生細胞においてのみマウスGーCSF遺伝子の発現が観察された. また, GーCSF遺伝子のプロモーターを大腸薗CAT遺伝子と結合し, CHUー2, HeLaやFL細胞に導入した. この際も, CHUー2細胞においてのみ, CATの発現がみられ, ヒト口腔がん細胞(CHUー2)におけるGーCSFの構成的発現は, そのプロモーターに作用する核内因子が構成的に産生, あるいは活性化されているためと結論された.
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