研究概要 |
1.ニワトリ胎児繊維茅細胞(CEF)に熱ショックをかけると,従来知られている3種の熱ショック蛋白質(HSP90,HSP70,HSP25)の他に分子量47,000の新しい熱ショック蛋白質が誘導されてくることが見つかった. この新しい熱ショック蛋白質(HSP47)は,他のHSPよりも比較的温和な熱処理によっても誘導され,熱感受性が高いことから,温熱療法における温熱耐性の問題を考える上で重要なHSPであると考えられる. 2.HSP47は,熱ショックで誘導される一方,細胞の悪性転換によっても合成量が調節され,悪性転換細胞では合成量が減少していることがわかった. この現象は,癌細胞において温熱感受性が高いというこれまでの報告に一致して,その機構を説明するものになることが期待される. 3.HSP47は,細胞内の小胞体に存在することが,抗HSP47抗体を用いて確かめられた. 一方,HSP47はコラーゲンに結合能をもっており,コラーゲンの様な分泌蛋白質の輸送やプロセシングに関与した機能が推定される. 4.HSP47の誘導のメカニズムを探る目的で,細胞よりmRNAを調製し,in vitroで翻訳させるシステムを用いて,HSP47前駆体の合成を調べた. その結果HSP47は,mRNAの転写レベルでの制御を受けていることが明らかになった. また,HSP47の合成のプロセスは,初めにシブナルペプチドをもつ42kDaの前駆体として合成され,シグナルペプチドが切断されて41kDaになるとともに,グリコシレーションが起って47kDaの成熟した蛋白質になることが明らかになった.
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