研究概要 |
体細胞を中心に研究されてきた発がん機構の研究に対し, 生殖細胞の変異が次世代での高発がんにつながることを見出し, この変異が個体レベルで発がん過程上, どのような役割りを演じているか研究した. 1.他系統マウスでの確認: この発見の普遍性を確認するために, ICR以外のマウスで実験を行っている. LTおよびN5マウス雄にX線504radを急照射した後, 正常雌と交配し, F_1を観察したところ, 肺腫瘍, 卵巣腫瘍ともにICRを用いた時と同じ誘発率で発生していることがわかった. また, 肺腫瘍を高発する変異はICRと同様に, 優性に遺伝している. このような遺伝性は, 自然発生腫瘍では認められず新しい変異が誘発されたことが判明した. 2.誘発された腫瘍の病理学的特徴: F_1に誘発された腫瘍46例中肝腫瘍等を除く41例(肺腫瘍24,白血病6,各関腫6,未分化癌3)は可移殖性であり, 殆んどが悪性腫瘍であることがわかった. 3, がん遺伝子の関与: 化学発がん物質および放射線の体細胞的処理により誘発された腫瘍119例からRNAを抽出し調べたところ, 63例に既存のがん遺伝子の発現が認められた. しかし, そのうちDNAレベルでの増幅があったのは12例(いずれもmyc)であり, 放射線誘発腫瘍には, 全くDNA増幅は見出せなかった. 一方, 放射線誘発遺伝性腫瘍では, 9例中3例に, ras, myc, fos, sis等. 複数のがん遺伝子の増幅がみとめられた. しかも, DNA増幅の見出せなかったもののうち4例をゴールデンハムスター細胞にトランスフェクションし新しいがん遺伝子を見出した. 4.高発がん変異の遺伝: 肺腫瘍および白血病高発系を利用し, 高発がんに関与する遺伝子の同定を行っている. リンパ性白血病とリンパ球枯死に遺伝的相関のあることが判明した.
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