研究概要 |
1.ras癌遺伝子蛋白に対するモノクローナル抗体の作製と解析 ras癌遺伝子蛋白p21に対するモノクローナル抗体を作製し, その特異性,癌組織に対する反応性を検討した. 免疫原としてkiーras遺伝子支配蛋白を用いた. 16クローンの抗p21抗体(RASKー1〜16)が得られた. 80例の胃癌症例,32例の良性胃上皮性疾患症例のパラフィン包埋切片を用いて抗体の反応性を検討した. 約79%(63/80)の胃癌症例において胃癌部分は抗体と反応を示したが, 胃癌症例,良性疾患症例のいずれにおいても, 形態的に正常と思われる部分への反応性は全くないか,極弱かった. 胃癌症例において, p21の発現は高分化型癌により強く認められる傾向にあった. 2.myc癌遺伝子産物に対するモノクローナル抗体の作製と解析 ヒト細胞より得たcーmycのDNAクローンを用いてcーmyc支配蛋白に対する5クローンのモノクローナル抗体(MYCー1〜-5)を作製した. 抗myc蛋白抗体により免疫組織化学的にmyc遺伝子発現を検出する至適条件を検討し, 腎細胞癌組織におけるcーmyc発現を解析した. 腎細胞癌原発巣26例,正常腎16例,転移病巣3例について検討した. 原発巣26例のうち20例が陽性であり, 陽性反応は核のみに認め, 細胞質及び細胞膜には認めなかった. この20例のうち, ほぼ全体の核が陽性であったのは14例, 残りの6例は一部の核が陽性であった. 異型度別にみるとG1 6例中1例,G2 19例中18例,G3 1例中1例が陽であった. 転移病巣3例(G2 1例,G3 2例)はすべて陽性であった. 正常腎では, 一部の尿細管上皮細胞の細胞質及び核が弱く陽性反応を示した. 核異型度が意味するであろう細胞増殖の度合いをkiー67抗体により検討したところ, kiー67抗体陽性所見とcーmycの発現との間に相関が認められた.
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