研究概要 |
免疫グロブリンH鎖のエンハンサー(Eμ)により活性化されているmyc遺伝子(Eμーmyc)をマウス受精卵に導入し, リンパ球系の腫疫を発生させうるのかどうか, 発生させうるとすればどの細胞でどの分化段階のものであるのか, mycのみで腫疫化するのかどうか, 病気の特徴は何か,遺伝的背景によってその進展や細胞の種類を変えうるのかどうか等を検討した. C57BL/6マウスに導入した場合, 生後4〜7週に発症し, 病理学的には白血病を伴なう悪性リンパ腫であった. 解析した限りではpreBもしくはB細胞腫であり,単〜少クローン性であった. またH鎖は全て再構成しμ鎖を産生していた. T細胞リセプターβ鎖の再構成は認められていない. 一方C3Hマウスに導入した時は, 大部分T細胞腫でありT細胞リセプターは再構成し発現していた. 以上からプロモーター領域及びエクソンIを欠いたEμーmyc遺伝子では発症が極めて早いこと,及び遺伝的背景により腫瘍発生の細胞特異性がかわることが明らかとなった. B型肝炎ウイルス(HBV)の慢性感染状態が続くと肝細胞癌の発生頻度が高くなることが知られている. HBVと肝癌との相関関係を解析するため, まずHBs抗原及びHBe抗原の発現しているマウスの作製を試みた. このため前年度迄に作製し, メチル化を受けていることの分っているp3HBマウスに5ーアザシチジンを出生一週後から投与した所, メチル化がとれHBs抗原を血中に検出しえた. 一方HBs抗原のみが発現するようにした遺伝子(HBsーGII)を導入しHBs抗原を血中に検出しえたマウスを得た. またHBs抗原を肝特異的に発現させる試みとして, 血清アミロイドP成分蛋白の遺伝子のプロモーターを, HBsにつなぎ発現するかどうかをHepG2細胞に導入し解析した. 発現していることが確認できたので, 現在トランスジェニックマウスを作製中である.
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