研究概要 |
鹿児島県下で昭和61〜62年度に発症したATL患者36名,同地区一般,康人112名,HAM患者44名と夫々の家族,計323名のHLAハプロタイプとHTLVー1特異T細胞増殖反応を測定しATL家系に特発するHLAハプロタイプの同定とそれに連鎖するHTLVー1免疫応答遺伝子の機能を解析した. ATL患者群のHLAは一見したところ多型性にとみ特定されるものは見出しえなかったが, A26B_w62C_w3DR5DQ_w3をプロトタイプとするHLA成分に注目すると, ATL群の全例でこれに関連するHLAが分断されて見出された. しかし, 一般健康集団, HAM群ではこれらのHLAの特徴をもたずATL群との相異が認められた. 加えて, ATL群に特異なことはHLAの, 失が約30%の患者でみられMHCを基盤とする免疫応答の異常が示唆された. HTLVー1抗原に対する免疫応答ではATL患者群では全て低応答性を示し, HAM患者群では高応答性であった. 後者はA11B_w54C_w1DR5DQ_w3(a),A24B7C_w7DR1DQ_w1(b),A24B_w54C_wーDR2DQ_w1(c)に関連して高応答性を示した. 低応答性はA26B_w62C_w3DR5DQ_w3(d)に関連していた. 前三者(a,b,c)は平均的日本人集団に高発するハプロタイプであることからHAM群は平均的日本人の系統であることが判った. 一方, 後者(d)はATL群に多発し全国日本人では非常に稀れ, HAMでは皆無であった. 以上のHLAハプロタイプの分布とHTLVー1免疫応答の高低差の関連性からATL群はHAMおよび平均的日本人集団とは異なる民族系統であり, かつ免疫機能の低応答性がATL群の発症素因に関係する可能性が示された. しかるに鹿児島県の一般健康集団でも上記HLAハプロタイプによってHTLVー1免疫応答能が区別されることが判った. 鹿児島県の特定家系でATL発症の免疫遺伝学的要因が関与している可能性がつよく示唆された.
|