研究概要 |
1.多剤耐性克服薬剤のスクリーニングと構造活性相関 ジヒドロピリジン誘導体24種類の多剤耐性克服活性を調べた. そのうちの13は多剤耐性変異株KBーC_1の抗がん剤耐性を完全に克服した. 9種は部分的に耐性を克服し, 2種は耐性克服活性を有しなかった. 耐性を完全に克服するグループはビンブラスチンのフォトアフィニティー誘導体,^<125>IーNASVによるPー糖蛋白質のフォトラベルを低濃度で阻害したが, 耐性克服活性を有しないグループはフォトラベルを阻害しないことが判明した. 構造と耐性克服活性についての検索により疎水性の強い誘導体ほど強い耐性克服活性を有することが判明した. 2.多剤耐性克服薬剤による耐性克服の機構 我々は合成イソプレノイドSDBエチレンジアミンがある種の制癌剤の効果を増強し多剤耐性を克服することを明らかにした. この合成イソプレノイドの作用機構をさらに詳しく調べるため^<125>IでラベルしたSDBエチレンジアミンのフォトアフィニティー誘導体を合成した. フォトアフィニティーラベルの実験により, SDBエチレンジアミンは多剤耐性変異株KBーCh^Rー24より分離したmembrane vesicle の150ー170K蛋白質と特異的に結合することが判明した. この膜蛋白は分子量や多剤耐性変異株に存在し薬剤感受性親株には存在しないことなどからPー糖蛋白質と同一と考えられる. SDBエチレンジアミンと150ー170K蛋白質の結合は, 耐性克服薬剤ベラパミール,フェノチアジン系カルモジュリン阻害剤,レセルピンにより阻害された. 抗がん剤ビングラスチンもこの結合を阻害したがコルヒチンでは阻害することができなかった. 以上の結果よりSDBエチレンジアミンは能動排泄ポンプと考えられているPー糖蛋白質と結合すること, その結合部位は抗がん剤や他の耐性克服薬剤の結合部位と同一らしいことが明らかとなった.
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