研究概要 |
先に我々は, 4NQOを細胞に作用させると, DNA中にキノリン付加体の他に8ーヒドロキシグアニン残基(8ーOHーG)が生成する事を見い出した. また8ーOHーGの生成は4HAQOをserylーAMP共存下in vitroで仔牛胸腺DNAと反応させても起こる事を明らかにした. 今回はin vitroの系を用い, このような反応が, すべての発癌性アソールヒドロキシアミンにおいても起こり得るか否かを調べるため, 代表的な発癌性アソールヒドロキシアミンであるNーOHーAAF,NーOHーGluーP_1,P_2を用い実験を行ったが, 8ーOHーGの生成は全く認められなかった. そこで構造をわずかに異にする一連の4HAQO誘導体を用い, 8ーOHーGの生成に対する構造活性相関を検討したところ, 8ーOHーGを生成させる必要条件は, 化合物の構造にNーオキシド基を有し, かつDNAと結合する能力を持つ事である事が明らかとなった. 8ーOHーG生成の機構については活性酸素のスキヤベンジャーであるSOD,カタラーゼ,マンニトールが全く阻害を示さない事から以下の機構を考えている. (1).究極活性体であるOーアシル4HAQOは酸化に対して極めて活性で, 空気中で容易にラジカルを生成し, それが引き金となり, DNA中のグアニン残基にもラジカルを作る. 反応系に存在する4HAQOのラジカルとグアニン残基のラジカルが, GのCー8位と4HAQOのNーオキサイドでラジカル結合をした後, キノリンがはずれて8ーOHーGを生成する. (2).Oーアシル4HAQOより生成するニトレニウムイオンが, DNA中のGの7位に不安定な付加体を作り, その後, H_2OがCー8位に付加した後, キノリンが脱離して8ーOHーGとなる. 現在どちらの機構が正しいかを検討中である. また4NQO発癌における8ーOHーGの生物的役割についても今後, 検討していくつもりである.
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