研究概要 |
C57BL/6マウスのHー2^b restricted,HーY specificなcytotoxic T cell(CTL)はTcR β鎖V portionの8番目の遺伝子(Vβ_8)を高頻度で使用していることが知られている. そこでVβ_8を用いているCTLクローンを作製すべく, まず雄C57BL/6マウスの脾細胞を雌C57BL/6マウスに免疫し, 雄C57BL/6と反応性を示すCTLクローンOIー6を作製した. 次にOIー6に対する抗clonotype抗体を作製する為に SJLマウスをOIー6で免疫し, OIー6と反応性を有する単クローン性抗体MR5ー2を作製した. MR5ー2のアイソタイプはγ2aである. (1)雄C57BL/6由来の細胞とOIー6との反応性をMR5ー2は特異的に阻害する事(2)MR5ー2と対応する抗原は, 分子量が各々43KDのヘテロダイマーである事等より, MR5ー2はVβ_8を認識する抗TcR抗体である事が明らかになった. この抗体は正常マウスT細胞の十数%と反応する. よって担癌マウスにMR5ー2を投与した場合に, 担癌個体の免疫系が変化する可能性が考えられた. そこで(C57BL/6×B10,BR)F_1マウスに1mgのMR5ー2を連日7日間投与し, 生体に及ぼす抗体の影響を, マイトジェンに対する反応性や抗原刺激に対する応答性の面から検討した. その結果Vβ_8を認識する抗体を投与しても, 生体の免疫系は変調を来さないと推定された. 更に, MR5ー2と反応するTリンパ腫の樹立を試みる目的でOIー6とAKR由来のTリンパ腫BW5147とを細胞融合させて, MR5ー2と反応性を示すT細胞ハイブリドーマKD11を作製した. 次に担癌マウスにおいてMR5ー2の抗腫瘍効果を検討した. 5×10^6個のKD11を, 500RAD放射線照射した雌の(C57BL/6×B10,BR)F_1マウスにivし, 2時間後に1mgのMR5ー2をivした. 更に24時間おきに同量のMR5ー2を計7回ivし, MR5ー2抗体の担癌マウスのlife spanに及ぼす効果を判定した. MR5ー2の投与を受けないマウス群は, KD11注射後25日以内にすべてのマウスが死亡した. しかし同じKD11をivされてMR5ー2で治療を受けた群でも腫瘍注射後の平均寿命は有意に延長せず, KD11注射後25日ですべてのマウスが死亡した.
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