研究概要 |
腫瘍マーカーとなる腫瘍特異抗原の多くは糖鎖構造である. その構造はそれぞれ基質特異性の高い糖転移酵素の出現によって決定されている. 腫瘍化によってこれらの糖転移酵素遺伝子が活性化される機構を解析するのが本研究の最終目的である. ウシβ1ー4Galactosyltransferase(以下β1ー4GT)のcDNAクローンを単離し, それをプローブとして, 昨年度はヒト胎盤cDNAライブラリーよりヒトβ1ー4GTcDNAを単離した. 4.2KbのこのcDNAクローンの全塩基配列, アミノ酸398個の配列を決定した. N末端側に18個の疎水性アミノ酸より成る膜結合部をもつ, そのC末側にプロテアーゼによりcleavageされると思われる配列がある. 膜結合型及び分泌型酵素活性の両方が検出されることから, β1ー4GTの蛋白レベルでのcleavageが示唆された. ウシーヒト間では核酸で78%, アミノ酸で88%ときわめて相同性が高く, この遺伝子が種を越えて保存されたものであることが示唆された. さらにC末側200個のアミノ酸はヒトーウシ間で96%と高い相同性を示し, この部分がGalactosyltransferaseに共通の基質であるUDPーGalの結合部ではないかと推察される. サザン分析の結果, 約35Kbに及ぶβ1ー4GTのゲノム遺伝子が予想され, 現在部分的にゲノミッククローンの単離に成功している. Stringencyを下げるとさらに多くのバンドが観察され, これらがGalactosyltransferaseがMultiーgene familyである可能性が示唆される. これを証明するため, これらの類似遺伝子をクローニングする準備を進めている. 各個人間でいくつかの多型性が認められ, 例数を増やすことによりハプロタイプ数について検討している. ノーザン分析の結果では, ヒト胎盤,Lu65肺癌細胞とも4.2KbのmRNAを検出でき, 我々のcDNAがfull lengthであることが確められた. 現在, UDPーGal結合部位と考えられる部分をprobeとして, β1ー4GT類似の他のGTクローンをスクリーニング中である. 発現型ベクターに組み込み, 期待する酵素活性が出現するかどうかも現在実験が進行中である.
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