研究概要 |
増殖因子受容体をコードすると考えられる癌原遺伝子cーerbBー2に関し次の知見を得た. 〔1〕CーerbBー2遺伝子に種々の変異を導入しSV40のプロモーターにつないだものをN1H3T3細胞にトランスフェクトし細胞癌化能を解析した. その結果(1)正常CーerbBー2遺伝子, リガンド結合ドメインに欠失を導入したmutantは細胞をトランスフォームする活性をもたないが, 細胞膜通過部位のmutant(Val→Glu)はトランスフォーミング活性をもつことが明らかとなった. (ii)しかし正常遺伝子を導入した細胞でも長期間経過すると軟寒天中でコロニーを形成するものが出現したので解析したところCーerbBー2遺伝子が増幅していることが判明した. したがって正常CーerbBー2遺伝子でもその発現が高まれば細胞をトランスフォームすることができると考えられる. (iii)細胞膜通過部位に変異を導入したmutantタンパクは常にチロシンリン酸化をうけており, チロシンリン酸化とトランスフォーメーションの関連が示された. EGF受容体ではC末端のチロシン残基(1173番目)がin vivoで自己リン酸化をうけることが知られているが, このmutantタンパクではこれに相当する1248番目のチロシン残基がリン酸化をうけていた. これに対し, 細胞をEGFで刺激するとCーenbBー2タンパクのチロシンリン酸化がおこるが, 2の部位のリン酸化はあまり増加していなかった. 〔2〕CーerbBー2遺伝子は一部の腺癌で多量に発現しているが, 成人正常組織では発現が低く発現の組織特異性も明らかでなかった. 今年度, 胎児(10週および20週)について検討することにより,腎,食道,小腸,胸腺などの上皮で極めて多量に発現していることを見出した. したがって, cーenbBー2遺伝子は胎児期の上皮の増殖に重要な役割を果たしている可能性があると考えられる.
|