研究概要 |
アスペルギルス〓かびの二次代謝物として分離されたアステリキノンおよびその類縁体(ビスインドリルベンゾキノン)の多くはほとんど抗腫瘍性を示さないが, これらを構造修飾することによって活性化しうることを見出し, この線に沿って新抗癌剤の開発を目的として研究を進めてきた. 本年度は61年度にひき続きビスインドリル型化合物における活性-構造相関から得られた知見をもとに, 新たに諸種のモノインドリルベンゾキノン体(図1)を合成し, 主にこれら化合物の1)マウスL5178Y白血病,Meth・A 肉腫(腹水型)およびエールリツヒ癌(結節型)に対するin vitroおよびin vivo抗腫瘍効果ならびに2)DNAポリメラーゼなど核酸代謝系酵素活性の阻害について検討した. その結果, KCー1063(R_1=CH_3;R_2,R_4=OH;R_3=H)およびKCAー3(R_1=CH_3;R_2,R_4=Cl;R_3=NH・(CH_2)_2・N(CH_3)_2)がとくに優れた効果を示した. すなわち, 前者の白血病細胞の培養系でのIC_<50>は徴弱(>50μg/ml)であったが, 該細胞移植マウスに対する投与(12mg/kg,day1〜7,ip)では, ILSが120%以上, 長期間生存マウスは50%に達した. 一方, 後者のIC_<50>は強力(2.5μg/ml以下)であり, L5178YあるいはMeth・A移植マウスに対する投与でもきわめて効果的であった. また酵素阻害活性では, 前者がDNAポリメラーゼαおよびβに, 後者の逆転写酵素にそれぞれ特徴的に阻害効果を示した. しかしながら, 前者は水に不溶, 後者は易溶であることから, 体内動態の様相に差異があるとみられ, 今後さらに両者を中心に検討を継続し, 新しいタイプの抗癌剤の開発に努める.
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