研究概要 |
本研究者らは昨年度までに2′位にフッ素基を3′位に水酸基を有するアドリアマイシン類似体(FTーADM)及びその14ーヘミピメレート体(FADー104)を合成し, これらの化合物が強い抗腫瘍活性(FADー104:T/C%,〉674,Lー1210,5mg/kgマウス,ip,1〜9日科投)と低い毒性を有することを見いだした. 本年度は天然のアンスラサイクリン抗生物質に構造がより類似した含フッ素化合物として, 2′位にフッ素基を3′位にアミノ基を導入した7ー0ー(3ーアミノー2,3,6ートリデオキシー2ーフルオローαーLータロピラノシル)ーダウノマイシノン(1__〜)及びーアドリアマイシノン(2__〜), さらに1__〜の3′ーモルホリノ誘導体(3__〜),1__〜のNートリフルオロアセチル体(4__〜),硫酸アミド体(5__〜)を合成した. 1__〜及び2__〜はダウノマイシン及びアドリアマイシンとほぼ同程度の抗腫瘍性を示したが, 毒性はFTーADMよりも強く,3′位のアミノ基が毒性の発現に大きく関与していることが示された. 3__〜は強い毒性を示したが, アドリアマイシン耐性がん細胞の生育を強く阻止するという興味ある知見が得られた. 4__〜及び5__〜は弱い抗腫瘍性を示した. また2′位にフッ素以外の電子吸引基としてメトキシ基を3′位に水酸基を導入した7ー0ー(6ーデオキシー2ー0ーメチルーαーLータロピラノシル)ーダウノマイシノン(6__〜)及びーアドリアマイシノン(7__〜),さらに水溶性化合物として7__〜の14ーヘミピメレート体(8__〜),14ー硫酸ヘミエステル体(9__〜)を合成した. 6__〜,7__〜,8__〜は顕著な抗腫瘍活性を示し, 2′位にフッ素に限らず電子吸子基を導入することが抗腫瘍性の増強に寄与することが明らかとなったが,2′ーフッ素誘導体の方が活性,毒性の面においてややすぐれている. 9__〜は抗腫瘍性を示さなかった. 今後は2′位にフッ素基を3′位に種々の置換基を有する誘導体を各種合成し,より強力な制がん剤の開発をめざすと共に薬剤耐性がんに有効な制がん剤の開発をも追求する計画である.
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