研究概要 |
子宮頚癌新鮮手術材料よりDNAを抽出し, サザンブロット法をもちいて,HPV16ならびに18型の存在を検討した. 17症例のうち, 10例(59%)にHPV DNAが証明され,その内訳はHPV16型が7例,HPV18型が3例であった. 新鮮手術材料の入手不可能な症例では,パラフィンブロックとして保存された組織よりDNAを抽出し,ドットハイブリダイゼーション法を行なった. 子宮頚部浸潤癌69例のうち,29例(42.0%)にHPV16型が認められたが,HPV18型は認められなかった. これらを組織学的にみると,扁平上皮癌;24/55,腺扁平上皮癌;2/6,腺癌;3/7,未分化癌;0/1であった. ドットハイブリダイゼーション法でHPV16型が陽性となった10例をIn situ hybridization法で検討したところ,HPV16型DNAは7例に検出できた. 一方,HPV 16 specific mRNAは3例に検出できた. HeLa細胞中では,HPV18型は主として,1.6kb,3.4kbの2種類のmRNAとして転写されている. これらのmRNAは共に細胞DNA中に組み込まれたHPV18型が,細胞側の転写シグナルを使って転写されたもので,ウイルス由来配列と細胞由来配列が融合したものであった. ウイルス由来配列中には,蛋白質に翻訳され得るOpen Reading Frame(E6*,E6,E7)が認められた. 1.6kb,3.4kbのmRNAに相当するcDNAとE7領域のみを含むものをそれぞれNIH3T3細胞に導入した場合,NIH3T3細胞は軟寒天培地中で増殖するようになった. 一方,E6*,E6をそれぞれ単独でNIH3T3細胞に導入しても,軟寒天培地中での増殖能は得られなかった. HPV16型を含む子宮頚部癌細胞DNAでトランスホームしたNIH3T3細胞では,HPV16型由来のmRNAが数種類の長さで観察されたが,これらをcDNAライブラリーから単離し,そのうち4つのcDNAクローンについて,構造解析を行なったところ,いずれもウイルス由来の配列中にE7 ORFを持っていた.
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