研究概要 |
閉鎖性水域の環境保全対策を策定する手法を確立するため, (1)アンケート調査を通じて都道府県における水域管理の現状を把握し, (2)霞ヶ浦, 琵琶湖を対象として, 導水, 放水量制御等による水質改善効果, 水辺整備と水質浄化能など技術的側面を検討し, (3)科学, 経済, 社会慣習, 法制度の側面において閉鎖性水域の保全管理の対策の重要な課題を抽出した. 以上の検討結果を踏まえて, 定性的な評価項目をも取り扱うに適した手法である知識工学システムを用いた水域環境保全対策策定法を開発した. 本研究で採用した水環境保全対策策定のプロセスは, (1)水域環境データベース, (2)保全対策データベース, (3)水質モデルデータベースの三つのデータベースと, (4)個別対策代替案を選び出すための水域特性-保全対策関連ルールベース, (5)個別対策同士の適合性を判定するための対策組合せルールベースからなる知識工学システムを活用した選定プロセスから構成されている. 水環境データベースには, (1)湖沼, 河川, 流域の物理的諸元, (2)汚染状況, (3)人間活動, (4)地域指定, (5)気象などの情報が含まれる. 保全対策データベースには, (1)汚濁の発生, 排出, 湖沼への流速の制御, (2)水域内での浄化, (3)周辺環境の整備等の対策情報に加え, これら対策に関する(1)効果, (2)費用(3)維持管理と安定性, (4)環境影響などを整備した. 水質モデルデータベースは対象水域に対して開発されたモデルを用いることを基本とし, 水質予測モデルとしては統計モデルを採用した. 富栄養化現象には未解明の部分が多く残されており, 必ずしも十分な専門的知見が得られていないのが現状であるが, ここに開発した対策策定手法は, 新知見を取り入れて容易にこれに対応し得る点に特長がある. 以上の結果を取りまとめ, 更に他の関連2班の成果の要点をも含めた成果報告書を作成した.
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