研究概要 |
(1)現在修復が進行中の「アダムとエヴァの楽園追放」「エヴァの誕生」と, これまですでに修復を完了した各場面を足場の上に登ぼり, 近接した場所から各部分を比較検討し,ミケランジェロの制作過程の推移について考察. (2)すでに修復した「ノアの泥酔」ならびにその四隅のイニューディ等に修復の結果, 弟子の手になる部分があることが判明, プットーを含めて各場面, 各形態を直接調査し, ミケランジェロと弟子の問題にも検討を加える. (3)フレスコ画におけるカルトーンの使用, インチジオーネ,スポルヴェロなどどのように使い分けられたのか検討する. (4)システィナ礼拝堂の建築について, その様式や思想を天井壁画との関連から調査する. (5)ミケランジェロと同 1987年(昭和62年)において,「エヴァの創造」およびその下の預言者,巫女像そしてリュネット部分を観察,調査を行なったが「研究成果の概要」にも述べたように技術的な問題と図像的な問題でそれぞれ研究調査を行なった. 「アダムの創造」はまだ修復にかかっておらず, 三場面「アダムの創造」「エヴァの創造」「楽園追放」まとめて考察するわけにはいかないが, 研究実積としては預言語,巫女像についての観察,調査がある. これは今回調査の「巫女エトルリア」が頂度同じシスティナ礼拝堂の壁画のシニョレルリの「モーセの遺言と死」の中の裸体の青年と形態的によく類似しており,さらにジニョレルリのオルヴィエートのサン・ブリツィオ礼拝堂天井画の「教会博士たち」,「族長たち」「聖処女たち」の中の多くの座像との関連が見出せることが新しくわかった. ミケランジェロの師として,シニョレルリの反サヴォナローラの「反キリスト」図を含む「最後の審判」の礼拝堂壁画との思想的関連が検討されねばならない. 「預言者ザカリア」が「聖ヒエロニムス」,「預言者ヨエル」や「預言者イザヤ」などが「族長たち」の人物達,又,「巫女デルフィカ」が「最後の審判」の天使に類似するものがあり,他の預言者・巫女たちも,かなりシニョレルリ図との関連が見出される. 又,その中に描かれたプットーたちも,「コンコルダンス(和)とカリアテュードのプットーたちが「ディスコルダンス(不和)であることが判明した. これまで預言者,巫女が切り離されて論じられてきたが,交互に一人ずつ配置され(祭壇上,入口上を除く),やはり四気質,四世代,四つの時,四大元素などの単位でそれぞれ四人ずつの単位で描かれていることがほぼ判明した. このことは研究代表者の第三回の調査報告に記されている.
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