研究分担者 |
閔 丙未 壇国大学, 科学教育科, 助教授
趙 京済 仁済大学, 生物学科, 助教授
大 熏洙 ソウル大学, 動物学科, 教授
金 俊鎬 ソウル大学, 植物学科, 教授
武田 哲 東北大学, 理学部, 助手 (50171640)
鈴木 孝男 東北大学, 理学部, 助手 (10124588)
木村 真人 名古屋大学, 農学部, 助教授 (20092190)
菊地 永祐 東北大学, 理学部, 助教授 (00004482)
|
研究概要 |
韓国の西・南海岸には国土面積の3%にも達する世界最大級の干潟が発達し, 干拓年度の異なる干拓地が保存されており, また洛東江河口域(釜山近郊)には三角州, 砂州, 干潟, 塩性湿地が保存され, 干潟, 河口域の生物相は豊富である. 本研究の目的は, 河口・沿岸域生態系の諸問題を韓国のそれらと比較することによって, 北東アジアの河口・沿岸域生態系の動物, 植物, 微生物を水・土壌特性との関係において解析し, また干拓地において土壌, 生物群集を調査し, 残留塩分, 土壌の酸性化など干潟埋め立ての影響をあきらかにすることにある. 調査干拓地は干拓後とくに利用されることなく放棄されてきた世界的にも数少ない干拓地である. 調査は干拓後5年, 10年, 15年を経過した年代の異なる地域を選び, 主として土壌の断面構造, 土壌の理化学的性質, 植生の変化の面から行った. また最近水田として利用されている干拓地についても比較のため簡単な調査を行った. 採取した土壌試料は日本側, 韓国側の分担者がそれぞれ調査項目を分担して分析中であり. まだ結論は出ないが, 現場の植生及び土壌断面の観察より, 植生は干拓後マツナ群落, ウラギク群落, きく科のSonchus群落, エノコログサ群落, チガヤ群落, ススキ群落の順に変化することが示唆され, さらにその変化のスピードは土壌表層への淡水の流入, 土壌不透水層の深さ, 地形の高度, 土壌中のカルシウム濃度が増すことによって早められることが示唆された. 潮位差8mと世界最大級の干潟である韓国西海岸の野牧干潟においては, 日本の潮位差の少ない干潟と異なり, ごく隣接した場所でもその高度の差は3mにも達し, 高度によって底質のEhが極めて異なることが今回の調査で分った. 今後韓国から持ち帰った干潟の生物, 土壌試料の分析により, 潮位差と生物, 土壌の理化学的性質の関係が明らかになると考えられる. 釜山の洛東江河口域の調査においては, 出現する生物種がイソシジミ, ソトオリガイ, ヤマトオサガニ, アシハラガニ, ゴカイなど日本の河口域にみられるものと同じで, 韓国と日本の河口域の生物組成がきわめて類似していることが明かとなった. 河口域の生物, 土壌試料についても, 現在整理, 分析中でであり, 干拓地, 干潟の調査結果とともに, 成果をまとめ, 公表の予定である. そのために, 昭和63年度海外学術研究調査総括を申請しており, そのなかで韓国側分担者を日本に招請して, 成果検討会議, その成果発表のための公開セミナーを開催し, 報告集を出すことを考えている.
|