研究分担者 |
G. S.ウエレ ナイロビ大学, アフリカ研究所, 所長
小田 亮 埼玉大学, 教養学部, 枚務補佐員 (50214143)
小馬 徹 大分大学, 教育学部, 助教授 (40145347)
中林 伸浩 金沢大学, 教養部, 教授 (30019848)
松園 万亀雄 東京都立大学, 人文学部, 教授 (00061408)
長島 信弘 一橋大学, 社会学部, 教授 (60008646)
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研究概要 |
本調査研究の目的は, 西ケニア諸地域において現在進行中の社会的文化的変化を, 西欧文明や国家政策の影響に対する各民族集団独自の対応に注目しながら解明することである. そのことによって, 第三世界の多民族国家における国民文化の形成過程を当事者である諸民族の観点にたって見ることを目指す. 本調査研究の対象は, 西ケニアに居住する次の諸民族集団である. ルオ, テソ, イスハ, テリック, テイリキ, グシイ, クリア. 調査は, 現在進行中の社会的文化的な変化について, 社会人類学の参与観察と面接の手法によって行われた. 主要な調査事項は, 行政制度, 司法制度, 自助組織, キリスト教会, 伝統的世界観, 民族間関係, 等である. その結果, キリスト教などの外来文化や国家レヴェルの政治的経済的状況と各民族の伝統文化との出会いによる変化のプロセスについて多くの知見が得られた. 特に, 西ケニアにおける社会的文化的な変化のうちに, 諸民族の等質化や国民意識の強化に向かう方向と諸民族の独自性の再生産や伝統回帰, 個別民族の民族意識の高揚に向かう方向とが併存して, きわめて複雑な様相を呈していることが明らかになった. , ルオの教会における憑依儀礼, イスハやテイリキの死者記念祭に関する研究によって, 「独立教会」が, 一方で反伝統の姿勢や個別民族集団の枠を越える活動への志向を持つと同時に, 伝統の再興の媒体ともなっていることが明らかになった. バンツー系諸民族の影響のもとに死者に関する複雑な儀礼を短期間に新たに形成したテソ族の研究は, 隣接民族の影響を民けつつ受族文化の独自性を再生産する方向で新しい文化要素を生み出しているケースを明らかにした. カレンジン諸族の間で例外的にバンツー系民族と親密な関係を保っていたテリック族に最近見られる反バンツー的動きの研究は, 民族的アイデンテイテイの流動性に光を当てた. 数量的データによるグシイ族の婚姻制度の変化の研究とイスハ族の伝統的な長老政治と新たに導入された首長制の関係に関する研究とは, 社会制度の変化のプロセスに新たな光を当てた. クリア族の研究は, クリア族の世界観の現状を明らかにして変化研究の基礎を据えた. 第二次の調査では, 上記の複雑な変化の状況を全体的統一的にとらえる理論的立場の確立を目指す.
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