研究分担者 |
TAYLOR R.W. CSIRO, 昆虫部門, 主任
東 正剛 北海道大学, 環境研究所, 助手 (90133777)
山根 爽一 茨城大学, 教育学部, 助教授 (40091871)
安部 琢哉 京都大学, 理学部, 助教授 (00045030)
今井 弘民 国立遺伝学研究所, 助教授 (10000241)
伊藤 嘉昭 名古屋大学, 農学部, 助教授 (50115531)
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研究概要 |
本研究は社会性昆虫の社会進化を研究していく上で重要なオーストラリアのハチ・アリ・シロアリ・オオゴキブリ類を生類学・分類学的に研究することを目的としている. それぞれの昆虫類において, 社会生物学上重要な種について詳細な習性・生態観察を行い, またコロニーを採取して社会構造に関するデータを取る. これにより, 東南アジアにまで分布を拡げているオーストラリア起源のシロアリ, アリ, ハチの分類・整理に寄与するとともに, 各分類群における社会性進化の起源を明らかになることができる. 原始的なアリであるキバハリアリ類に関しては染色体調査を行い分類学上の検討を行う. 本年度は現地調査を昭和62年8月25〜12月28日にかけて, 北部直轄州, クイーンズランド州, ニューサウスウエルズ州の中心に各研究者の専門的立場から行った. 狩りハチ類に関しては, チビアシナガバチの5種の社会構造を個体マーク法によって観察された. これらの観察の中で特筆すべき発見は, Ropalidia plebeianaにおける創設直後の巣の分割によるコロニーの増殖である. このような増殖法は, 従来社会性昆虫ではまったく知られていなかったものであり, 国際的に注目されるであろう. アリ類に関しては, トビキバハリアリ類の特異な染色体多型が明らかとなった. このアリは, 従来1種と考えられていたが, 染色体, 形態, 生態の面からいくつかの新種に分けるべきものであり, 染色体進化と種分化の問題を明らかにする上で大変重量であることが分った. また, 数種の系統学上重要なアリのコロニー組成および採餌行動のデータが多く取られた. シロアリ類に関しては, 山地熱帯多雨林におけるシロアリ群集の種組成, 生活様式, 密度, 現存量が明らかとなった. また, 現存するシロアリで最も原始的と考えられるオオシロアリ科の1種のStolotermesについて, 社会構造の進化を考える上で興味ある現象が見いだされた. 亜社会性のゴキブリに関しては, 従来ほとんど知られていなかったヨロイモグラゴキブリの生活様式が明らかにされた. このゴキブリは地中に営巣し家族生活をしているものであり, その生息密度の高さ, 巨大な体の大きさを考えると社会進化上たいへん注目されるものである. また, 朽ち木に生息するオオゴキブリ属の4種のコロニー組成についてのデータが詳しくとられた. 今後の計画として, 以上の研究成果をとりまとめるべく昭和63年度には研究総括を行い, さらに昭和64年度にはその総括に基づいて浮かび挙かった新たな課題に関して第2次調査を計画したい.
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