研究概要 |
高エネルギー宇宙ニュートリノ観測を目指すDUMAND計画の準備研究を行う. まず第1段階のプロトタイプ実験SPSをハワイ島の沖合いで実施し, 測定器類のテスト・深海環境・宇宙線ミューオンの測定を行う. その后 SPSの成果にもとづき,観測装置を深海底に係留して長期観測を目的とする次期計画の準備を進める. DUMAND計画の実現性を検討するため, full stringの1/3規模のチェレンコフ光観測装置(Short Prototype String)を完成させ, DUMAND siteで洋上実験を行った. この実験では観測装置の各種測定器の性能テストと共に深海環境の各種パラメータの測定を行い, 又宇宙線ミューオンによるチェレンコフ光の検出を試みた. SPSは7台の光検出器, 2台の発光器及び1台の海洋観測器を備えた観測装置である. 光検出器のセンサーは15吋口径の光電子増倍管で, 7台を5m間隔で配置した. 発光器は光検出器から出力される信号のタイミング及び波高値の較正に使用する. 海洋観測器は海水の各種パラメータ(温度・塩分・深度・流速)測定, ストリングの状態(回転・傾斜・加速度)の監視などを行う. 観測装置全体の長さは約70mあり, 洋上で揺れが少なく作業性がより半没水型双胴船を使用した. 1987年秋オアフ島及びハワイ島沖の深海に観測装置を降ろして運転し, 2000mから4000m深さまで500m毎のデータを収集した. 海水をリターンに使う電力の供給・電力線に重畳する低速通信・光ファイバーによる高速データ転送など装置は順調に働いた. 反面, 1部の水中コネクター及びElectroーOpticalケーブルのファイバー接合部に若干の問題点が生じた. 観測装置から得られたデータの解析は目下進行中である. ストリングの揺れは予想通り少く, 加速度は0.05g以下であった. 生物発光と見られる信号は深さと共に減少し, 1光子レベルでの頻度は4000m深さでK40からの期待値の約2倍であった. 複数個の光検出器の同時計数により又それらの信号の大きさと時間差から宇宙線ミューオンの信号を検出出来る見通しが立ち, 実験の目的を達することが出来た.
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