研究分担者 |
MULMI Dhruba トリビューバン大学, 気象学教室, 助教授
鄭 本興 中国科学院, 蘭州氷河凍土研究所, 助教授
謝 自楚 中国科学院, 蘭州氷河凍土研究所, 教授
幸島 司郎 日本学術振興会, 特別研究員 (60183802)
岩田 修二 三重大学, 人文学部, 助教授 (60117695)
中尾 正義 北海道大学, 工学部, 助手 (90142695)
山田 知充 北海道大学, 低温科学研究所, 助手 (50002100)
高橋 修平 北見工業大学, 工学部, 教授 (50125390)
大畑 哲夫 名古屋大学, 水圏科学研究所, 助手 (90152230)
上田 豊 名古屋大学, 水圏科学研究所, 助教授 (80091164)
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研究概要 |
本研究の第一の目的は, 過去10年にわたってネパール・ヒマラヤを中心に実施してきた氷河調査を拡大し, アジア高山地域における氷河・積雪域の分布, 現在の状態, 変動の傾向を各地での野外観測によって明らかにし, その地域的特徴の比較研究を行うことである. 第二の目的は, アジア高山地域の湿潤および乾燥域の氷河・積雪の水資源的役割に関する基礎的研究を行なうことである. 昭和60年度に実施された第1次調査の結果をふまえ, 今回はヒマラヤと好対照をなすコンロン山脈を比較研究の重点地域として取りあげた. 本研究の第一の目的である氷河・積雪域の地域的特性の比較研究については, 今回の調査の重点地域をアジアで最も乾燥度の高い地域のひとつであるチベット高原内陸部の西崑崙山域におき, 氷河比較観測を実施した. その結果, 以下にあげる乾燥域氷河の特徴がわかった. 1)氷河の涵養については. 周辺の乾燥した平地の数倍の降水が氷河域に集中し, 氷河の形成・維持に山岳地形が有料に働いていること.2)氷河の消耗に, 乾燥のため蒸発が占める割合が大きいこと, 3)降雪は融ける前に蒸発するので, 河川の流量に降水の占める割合が小さく, 氷河の融解水が大部分を占めること.4)調査地域に多い氷帽型氷河は, 涵養量と消耗量がともに小さいため, 流動速度が極地氷床と同程度に小さいこと.5)気候変動にともなって地形に残される氷河の変動規模が小さいこと. なお, 今後の気象データ処理, 氷河掘削試料の解析, 地形試料の分析により, 内陸アジア乾燥域における氷河維持機構および環境変動を量的に明らかにしてゆく. また, ネパール・ヒマラヤ中部のランタン谷の基準雪氷観測所では, 1985年以来連続して気象・水文データを記録しており, 現在もネパール国水文・気象局の協力によって継続中である. また, 中国科学院蘭州氷河凍土研究所による天山観測所でも比較対照できるデータが継続してとられているうえ, 今回亜崑崙山域に長期自動気象記録装置を設置してきた. それらの結果とあわせて, アジア高山地域の湿潤域と乾燥域における氷河積雪の水資源的役割をも明らかにするためのデータ解析をすすめる.
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