研究分担者 |
P K.Buchanan ニュージーランド国立科学産業研究所, 標本館, 研究員
R Beever ニュージーランド国立科学産業研究所, 植物病学研究部, 室長
A.K Mills タスマニア大学, 植物学部, Senior Tutor
阿部 恭久 農林水産省林業試験場, 保護部, 研究員
土居 祥兌 国立科学博物館, 植物研究部, 室長 (10000134)
杉山 純多 東京大学, 応用微生物研究所, 助教授 (80142256)
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研究概要 |
日本の菌類相には太平洋西岸に沿って東南アジアを経てオセアニアにまで分布する要素が含まれる. 今回の現地調査では,このような分布を示す菌類及びニュージーランド・タスマニアで独自の分化を示す固有菌類の採集調査,分離培養を行い,これらの資料による日本産菌類との比較研究により上記菌類の分布及び分化の特性を明らかにし,今後の日本の菌類相の研究の基礎資料とする. 担子菌類ハラタケ目では日本産ムラサキフウセンタケに近縁の新種がニュージーランドのナンキョクブナ林で発見された. フウセンタケ科を中心にこのような分布と分化を示す例を目下研究中である. その他日本産シイタケにきわめて近縁と考えられるものの菌株が得られ,目下比較研究中である. タスマニアのナンキョクブナ・ユーカリ林からはツキヨタケに深い類縁があると思われるPleurotus nidiformisが採集でき,目下両者の関係を比較検討中である. 腹菌類ではハラタケ目に近縁の5属が採集された. これらの大半はニュージーランドの固有種である. Zelleromyces(地下生)はニュージーランド新産である. ヒダナシタケ目ではPiptoporus portentosusを含む5種がニュージーランド新産で,目下研究中のニュージーランド産4種とタスマニア産1種は新種である. 子嚢菌類では,日本のブナ科植物上に発生するHypoxylon fragiforme(ブナ上)とH.homeianum(シイ上)の中間型を示す菌株がナンキョクブナ上にみられた. またHypocrea属では世界に広く分布するH.pallidaの地理的分化による種と考えられるH.nebulosaがタスマニアに分布し,ニュージーランドには分生子型のかなり分化したH.pallidaの菌株が分布している. 日本には生態的分化による別種H.ampulliformisが別寄主上に生えることが明らかになった. このように近縁菌類間でAllopatric及びSympatricと考えられる種分化(種形成)の見出される具体例は菌類ではきわめて珍しい. カプノジウム目のススカビ類は南半球に栄える子嚢菌の一群であるが,わずかながら北半球にも分布し,独特の分化を示している. 今回の調査で南半球の豊富な標本資料を持ち帰り,日本産種との比較研究を始めている.
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