研究分担者 |
室山 泰之 京都大学, 霊長類研究所, 教務補佐員 (70314242)
佐倉 統 京都大学, 霊長類研究所, 教務補佐員 (00251752)
中川 尚史 京都大学, 霊長類研究所, 教務補佐員 (70212082)
星野 次郎 姫路独協大学, 一般教育部, 構師 (60199479)
松沢 哲郎 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (60111986)
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研究概要 |
社会構造も含む霊長類の生活様式は遺伝的・系統的に決められた部分が大きいにもかかわらず, 多様な環境で多様な表現型をとっている. 森林からオープンランドに進出する過程でホミニゼーンョンがおこったとするならば, 各々の環境条件の中でどの様な生活様式が成立するか, 成立させているか, そしてもっとも適応的かを明らかにすることはこの問題へのアプローチのもっとも重要な1つと考える. そこで, 数カ所の典型的な生息環境とそこに生息する霊長類の生活様式を明らかにし, 比較検討することによって適応放散の実態を明らかにすることを目的とする. カメルーン北部のカラマルエでは最乾燥地帯に適応したパタスザルの採食戦略を中心に調査した. 乾季, とくにかんばつ年には極度に食物の欠乏する厳しい変動環境において, 高い出産率と高い幼児死亡率という霊長類としては特異なr戦略をとり, 食物の豊富な年には高密生息になる一方, 高頻度の社会変動をおこすことがわかった. 反対の極致である熱帯多雨林の同国南西部のカンポには, 類人猿2種と狭鼻猿7種が同所的に生息している. 各種は互いに類似した食物選択をしており, 避け会うことなく積極的に異種混群をつくり, 季節によって大量に結実する果樹に集まってくる. 各種, とくにオナガザル類は安定した両性群をつくり互いに分かれているが, 異種群間で離合集散して高い現存量を維持している. 各段階の二次林を主としながら高層樹林もサバンナも耕地も含む混合環境のギニア東南部のボッソウでは, 長年月個体識別されているチンパンジー集団を調査した. パタスザルとは反対に, 出産率も死亡率も低いk戦略型安定個体群であった. ボッソウではこれまでにも食物獲得の為の道具使用が発見されてきたが, 今回は, 堀り棒使用によるDorylusアリの推破壊とアリ採取を発見した. 堀り棒の使用は, これまでアフリカ中西部に生息する別亜種にしか知られていなったものである. 大型霊長類としてのチンパンジーにとっては, たとえ食物環境の比較的安定した混合環境においても, その能力を存分に働かせて多様な道具を開発する必要がある. 先に本調査代表者によって発見された石器使用は, 近年, 隣国でも多様な変異をもって発見されつつあり, 石器の分布, 使用方法, 堅果の種類と分布, 等について厳密な比較が緊急課題となってきた. 他国研究者と足並みを揃えて研究を進めるために早急に態勢を整えなければならない.
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