研究分担者 |
H.J Moeshart ライデン大学, 文学部, 講師
C Kalkman オランダ国立〓葉館, 館長 兼ライデン大学・理学部, 教授
W R van Guli オランダ国立民族学博物館, 館長
L B Holthuis オランダ国立自然史博物館, 名誉館員
上田 恭一郎 北九州市役所市立自然史博物館, 学芸員 (40359469)
波部 忠重 東海大学, 学洋学部, 教授 (80138635)
馬場 敬次 熊本大学, 教育学部, 教授 (20038227)
重井 陸夫 東京大学, 理学部, 講師 (60011566)
大森 實 法政大学, 第二教養部, 教授 (80061050)
|
研究概要 |
シーボルトが日本で収集した多数の動物標本類はオランダの専門家によって研究され, その成果はファウナ・ヤポニカ(日本動物誌)において学界に紹介された. しかし, いろいろな事情からシーボールトは出版を継続することができず, その結果, 数千点の標本が未発表, 或は未研究の状態に取り残されたのであった. 幸いなことに, それらの多くが今日でもオランダに保存されている. 1985年に第一次本調査を実施したが, 標本の内容は予想外に多種多様で, 質も高いことが判明した. また, 標本のみならずそれに関連して多くの文書, 彩色図が未研究のままにオランダに保存されていることもわかった. この第二次本調査はそれらについて更に調査研究を深めてシーボルトの知れれざる自然史(博物学)上の貢献と活動を明かにすると共に, 彼に協力した日本の博物学者達の活動も明かにするため, 新事実, 新資料の発見, 発掘, 情報の収集を行なうことを意図したものである. 1・標本類の調査研究:オランダ国立自然史博物館・国立さく葉館・国立地質学博物館で行なった. 昆虫標本, 350種, 1450頭を確認できた. シーボルトが昆虫も多数収集したことは文献上で知られていたが, 今回初めてその存在が明らかになった. 確認したのは全体のまだ一部にすぎないがシーボルトの昆虫についても学門的水準が相当に高かったことがうかがえた. 甲殻類標本, 200種, 2000点を確認できた. 標本の質は極めて高く, シーボルトが甲殻類に特に関心が深かったことが裏付けられた. 軟体動物, きょく皮動物標本, これらは第一次本調査で扱ったが, 今回は補充調査を入念に実施した. 種数も増加し, シーボルト標本の状態をより具体的に把握することができた. 植物標本, 50種250葉を見つけることができ, 日本の自然史研究におけるシーボルトの果たした役割, 貢献についての総合的把握に近付く足掛りを得ることができた. 彼の植物標本についての研究は今回が事実上最初となる. 化石標本, 6箱, 250点を確認できた. 2・資料類の調査研究:特に重要なものを中心として調査研究を展開した. 合計98枚の動植物の採色写生画があり, その内容と精密さについて調査した. また, シーボルトが日本で入手した, 当時の本草学的筆の各種の写生図や記載について情報を入手すると共に, 一部については現地研究者と協同して研究を行なった. 見つけ出した標本類の全てについて写真を撮影したが, 資料類についてもコピーやノートがある, これらを活用して標本の種の正確な同定を行なうこと, また資料類についての研究を発展させることが今後の課題である.
|