研究分担者 |
ニファン ラタナウォラバ タイ国立理工学研究所, 環境生物部, 部長
諸喜田 茂充 琉球大学, 理学部, 助教授 (50045027)
山崎 柄根 東京都立大学, 理学部, 助教授 (90008714)
佐藤 正孝 名古屋女子大学, 家政学部, 教授 (70065340)
小野 展嗣 国立科学博物館, 動物研究部, 研究官 (50167326)
大和田 守 国立科学博物館, 動物研究部, 主任研究官 (40113419)
吉行 瑞子 国立科学博物館, 動物研究部, 主任研究官 (80100824)
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研究概要 |
東南アジアには, 地域による気候の違いや地形の変化を反映する特有な暖帯林が隔離的に分布しており, そこに生息する動物も周囲の熱帯林とは異なる独特の動物相を形成している. 本研究は, 各地の暖帯林の動物相を調査し, それぞれの特異性を比較分析することによって, 種分化の実態を解明することを目的とする. 小型哺乳類は各地で総計60種を越える標本を採集することができた. これらのほとんどは日本産の種類とは共通せず, 比較研究のための貴重な資料となる. また, この中には最近, 新科・新属・新種として発表されたコウモリCraeonycteris thorglongyaiが含まれている. 水生甲殻類は本第1次調査のフィリピンとの関連から東マレーシア・サバ州の調査を行い, バラワン諸島産の種と属のレベルでの共通性を確認した. マレー半島に関してはマレーシア側から北上し, また, タイ側から南下してほぼ全域をカバーすることができた. カニ類は地域ごとに著しく固有性が高いため, 種分化の考察には好適である. 一方, テナガエビ類は両側回遊をするため一般に分布が広く, 種分化を論ずるためには適当な素材ではないが, 時期的に抱卵雌を豊富に入手することができたため, 短期間の飼育によって幼生を得ることができた. 淡水産の他の重要群であるヌマエビ類は小型であるため, 種の同定に時間を要するが, 固有性が高く, 種によっては大卵化の傾向を明瞭に示しているため, 種分化に関する新知見が期待される. 昆虫やクモ類は採集個体数, 種数とも多いため, 標本化に時間を要し, 研究は未だ十分には行われていない. 概観したところでは, 暖帯林を中心に採集を行ったためか, 従来得られていない種がかなり含まれているようである. 特に, 最も原始的なクモ類であるハラフシグモ属や森林性のガ類(カレハガ科, ヤママユガ科, シャチホコガ科など)には, 未知の種ばかりでなく, 種分化を論ずるため望ましい種が多数含まれている. 本調査は60年度に実施されたフィリピンに次ぐ第2次調査である. 当初から予想されたことであるが, 今回のマレーシア, タイの資料によって, フィリピンの動物相の独自性がより鮮明になってきた. そこで, 台湾を集中的に調査し, 日本およびフィリピンの暖帯林の動物相と比較すれば, 種分化に関する内容のより深い研究が可能とすり, また, 台湾の亜高山・高山帯の調査結果は日本の動物相の起源の一部を示すことにもなると思われる. 当初, 第3次調査として計画した通り, 64年度には台湾の動物相の調査を希望している.
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