研究分担者 |
カニット ムアンニル タイ造林公社, 試験場長
ビラット タンピバル タイ国土開発局, 試験場長
ブレッド プラチャイヨ タイ森林局, 研究官
プリンチャ ダンマノンダ カセサート大学, 林, 助教授
ポンサク サフナル カセサート大学, 林, 助教授
桜井 克年 京都大学, 農, 助手 (90192088)
米田 健 大阪教育大, 教育, 助教授 (40110796)
神崎 護 大阪市立大, 理, 助手 (70183291)
立花 吉茂 大阪市立大, 理, 講師
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研究概要 |
本研究は, わが国のMAB計画関連研究の一つである. 熱帯地域では, 様々な人為的要因によって生じた各種の劣悪土壌地域がその分布域を急速に拡大しつつある. その様な地域の生物生産力を回復し, それを維持してゆく植生管理の方策を建て, また, そこで安定した農林業を行うのに有効な施行方法を確立するための生態学的基礎を得ることを目的とする. そのために, 熱帯における種々の劣悪土壌が, 各種の土壌処理実験によって回復してゆく過程と, そのあいだの造林木作物などの成長過程を明らかにする. 1. タクアパ:錫鉱山跡の硅砂土壌実験区 硅砂のみからなるこの実験地では, 植物は肥料なしでは全く成長しなかった. 土壌処理区中最もめざましい効果がみられたのは, 粘土質泥土を客土し, 有機及び無機質肥料を与えた区であった. 農業区では, 65年度の実験で緑葉による覆土(マルチング)の効果が顕著であったので, 66年度より造林区でも同様の試験を行い, 大きな効果が得られ, 67年度からは各種のマルチング材料を用いた実験を開始した. 客土は経費の点で実用的ではないので, 緑葉マルチングによる土壌改良の成果が期待される. 2. ラチャブリ:過伐採によりラテライト・ハードパンが形成された実験区 ここでは, 耕起によりラテライト・ハードパンが破壊されたところで造林木や作物の成長がよく, ハードパンの機械的破壊が重要であることが分かった. 傾斜地では土壌侵食が進行し, 栽培初期の林床の植物被覆が侵食防止に有効であった. 成長の遅い有用樹種の植栽には, 十分なサイズに育った苗木の使用が必要であることが分かった. 3. ソムデット:低地焼畑耕作跡実験区 土性は4実験区中もっともよく, チカラシバ属雑草の繁茂が著しい. 雑草の造林初期における除草と, 農業区での年3回の除草が生産力を確保するために必要であった. 除草による地力の消耗を防ぐため, 農業区の周囲に浅い堀を作り, 雨季の間に除草した草を堀内で分解し, 翌年その低土を客土する循環実験を67年度から開始した. その効果が期待される. 4. フェイ・トンジョウ:高地焼畑耕作跡実験区 高地(標高1400m)にあるため, 熱帯の土壌としては悪くない. 傾斜地であるが, 土壌侵食は雑草の急速な繁茂によって防止できた. 従って, 造林地では, 最小限の除草が有効であった. ここでは造林適合樹種の探索に重点がおかれ, カシアマツ, カリアンドラ(マメ科), スギ, ヒノキ, コウヨウザン, キリのほか, チャノキ, コーヒーの栽培が試みられている.
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