研究分担者 |
張乃 健 山東大学, 物理部, 助教授
任敬 儒 高能物理研究所, 助教授
鳥居 祥二 神奈川大学, 工学部, 助手 (90167536)
白井 達也 神奈川大学, 工学部, 助教授 (20102238)
笠原 克昌 東京大学, 宇宙線研究所, 助手 (00013425)
水谷 興平 埼玉大学, 理学部, 助教授 (60008844)
堀田 直己 宇都宮大学, 教育学部, 助手 (60157039)
太田 周 宇都宮大学, 教育学部, 教授 (30008023)
雨森 道紘 弘前大学, 理学部, 同講師
南条 宏肇 弘前大学, 理学部, 助教授 (00106840)
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研究概要 |
中国チベット自治区カンパラ山宇宙線観測基地(5500m)に面積約100m^2のエマルション・チェンバーを中国と共同で設置し, 10^<15>ー10^<17>eVの一次宇宙線が大気中で起こす核相互作用現象ーファミリーと呼ばれるーを観測する. これら高エネルギー宇宙線現象の大気中での振舞いから, このエネルギー領域での核相互作用の変化の様相及び一次宇宙線の組成, エネルギー・スペクトルを調べることを目的している. 今年度は61年4月に設置した面積59^2, 厚さ9c.u.の鉄エマルション・チェンバー, 及び面積60m^2, 厚さ30c.u.の鉛チェンバーを62年5月に解体し, 新たに同種のチェンバーを設置した. このチェンバーの解体作業は63年4月に行う予定である. 解体されたフィルムは北京の高能物理研究所で現像され現在その解析を進めている. このチェンバーで1000TeV以上のファミリー現象を3例観測した. また約400TeVの2芯コア現象,100TeV位のハドロン3本からなるファミリー現象も観測されている. いままでのカンパラ山実験で200TeV以上のファミリー現象が約100例観測された. 今年度はこれらの結果を4編の総合報告として纒め, 学術雑誌に投稿した. 得られた主な結果は, 1)核破砕領域でのファインマンのスケーリング側の大きな破れは認められない. 2)相互作用断面積は10^<16D1eV領域までエネルギーの略0.06乗に比例して増大している. 3)発生する2次粒子の横向き運動量の大きさはエネルギーと共に緩やかに増大し, 10^<16>eVで略500ー550MeV/cの値になる. 以上のような核相互作用の大局的様相は現在の加速器データのスムースな延長と矛盾しないという結論が得られている. 他に, 2芯コア現象等特異と思われる現象も数例あるが, その頻度は小さく(2%以下)この結論を変えるものではない. 一方一次宇宙線については陽子の一次宇宙線中に占める割合が10^<14>eV近辺から減少し, 10.ナD115>eVでは(15ー20)%程度になると結論されている. 64年度以降の研究計画についても数年来研究者間で議論されている. 今までのカンパラ山の実験の結果に基いて, 今後は10^<15>ー10^<16>eV領域の一次宇宙線の組成とスペクトル, 及びCyg.Xー3等宇宙天体からの高エネルギー・ガンマー線の観測が重要と考え, 研究内容をさらに広げた新計画として推進することで意見が一致している. 研究の物理目的はこれらの観測から, 高エネルギー宇宙線の起源と加速の問題を総合的に追求することであり, そのためにはチベットの高度が最適であると結論されている.
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