研究概要 |
この研究の目的は, 61年度実施の米国における気候モデルの開発状況の調査およびモデルの共同開発のあとを引き継ぎ, ヨーロッパ各国における気候モデルとそれを用いた研究活動の現状を調査し, 当東京大学グループが開発中の共同利用可能な大気大循環モデルの性能向上に資すること, およびそのモデルを用いて今後実行する研究計画立案のための参考資料を得ることである. さらに, 気候モデルを有する外国諸研究機関との交流し, 今後の国際的共同研究の手がかりを得ることでも有意義である. (1)ヨーロッパ中期予報センターにおいては, 最新の高分解能大気モデルの性能と欠点, および改良のための方策について情報を得た. また, モデルと観測データをブレンドした解析により, モデル中の物理過程の妥当性をチェックする新しい方法についても説明を受けた. これらの知識を東大モデルの改良に役立てる予定である. (2)ケンブリッジ大等英国の大学連合による共同利用大気モデルの開発計画, 利用体制について情報を得た. 4〜5の大学の大気科学研究グループで連合して共用のモデルを開発し, スーパーコンピューター(CRAYーXMP)を共用で1台保有し, 数値実験を行う計画が進行中である. (3)フランスCNRSの大気力学研究所におけるモデルの仕様・性能とそれを用いた研究実施状況について情報を得た. パリ大学と共同で大気・海洋結合モデルを開発中であること, フランス気象局と協力してモデルの改良を行っていること, CNRSでは100名近し研究者がスーパーコンピューターを使って気候の研究を行っていることがわかった. (4)ドイツのマックス・プランク気象研究所では, 現在25名ほどの研究者が気候モデルによる研究に従事しており, 大気・海洋結合モデル, 古気候, CO.ナ_<2.ニ>循環の数値実験などが行われていることがわかった. 近い中に同研究所が中心となり,ドイツ国内の大学の気象研究者の連合による気候モデル研究センターを設立し, スーパーコンピューターを設置して大規模に研究を行う計画が進行中とのことである. (5)以上を総合し, 数年前まで米国に比べ遅れていたヨーロッパ各国の研究が急速に進展しつつあること, また, 「大学連合で共用のスーパーコンピューターを持ち, 気候モデル研究センターを作る」方向にあることがわかった.
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