研究分担者 |
松岡 武夫 名古屋大学, 理学部, 助手 (90022722)
菅本 晶夫 高エネルギー物理学研究所, 物理研究部, 助手 (70132686)
清水 韶光 高エネルギー物理学研究所, 物理研究所, 助教授 (20011744)
岩田 正義 高エネルギー物理学研究所, 物理研究所, 教授 (80022698)
吉村 太彦 高エネルギー物理学研究所, 物理研究部, 教授 (70108447)
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研究概要 |
現在の素粒子論では, クォーク・レプトンを物質の基本単位とし,その間の強い相互作用,弱い相互作用,電極相互作用はゲージ・ボゾンによって媒介されるゲージ理論が正しいとされている. ウィーク・ボゾンは1983年,CERNのPP衝突型加速器SPSによって,ほぼ理論の予言通りの質量のところに発見されたが,実験グループはさらに励起されたウィークボゾンや超対称性理論の予言する粒子の存在を示唆するような新現象も見い出し衝撃を与えた. これらについての情報収集や理論的解明を目指すことは日本の高エネルギー物理学の進展にとって重要である. 本課題の目的はCERNのPP衝突型加速器SPSを用いてUA1及びUA2により発見された新現象についての調査・研究であるが,現在SPSによる実験の関心はむしろ重い原子核ー原子核反応に向けられており,ウィーク・ボゾンの関与する素粒子の基本理論についての精密な実験的検証は1989年夏に稼動が予定されているe^+e^-衝突型が速器LEPを持つ他はないという状況である. 他方わが国ではTRISTANが動いており,そのデータ解析に必要な理論計算には膨大な蓄積がなされており,これらをLEPのエネルギー領域に適用することも重要である. このためLEP4実験グループのうち,OPAL,ALEPH,L3のデータ解析の責任者と多数回にわたって会合を持ち,日本で開発したO(α)の輻射補正,ハドロンのシミュレーション,計算機によるファイマン・グラフの生成など計算プログラムの移植,計算方法についての議論を重ねた. その結果,現在我々のプログラムを用いた解析準備を進められており,LEPに対しても大きな貢献が出来るようになった. 純理論的な面では,O(α^2)の輻射補正の効果が,とくに〓のピーク付近で問題となって来ており,vertex補正については既に日・欧で計算されている. しかしboxグラフについては計算法すら分らない状況であったので,ある種の展開法によって任意の近似的な表式を得るための手法を開発した. これはQEDに対しては確立したが,とくにウィーク・ボゾンを含む場合への拡張は重要である. これについては現在も研究が続行中である. 以上のように,TRISTAN実験のために開発して来た,種々の理論計算プログラムがLEP実験にとっても貴重なものとなりつつあり,今後もこの方向に沿っての活発な研究対流を確保することは,世界的規模での素粒子研究の進歩にとって非常に重要であると考える.
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