研究概要 |
現在, 国立教育研究所では, 国立国語研究所, 筑波大学等の研究者と協力して, 科研費(試験研究)による「パソコンによる外国人のための日本語教育支援システムの開発」の研究を進てており, 日本語教育に関する資料の収集, 実態の調査等を行っているが, 海外における日本語教育の実態等に関しては, 充分な情報, 資料を得ることがぶきない状況にある. 本調査研究の目的は, 海外において外国人を対象として実施されている日本語教育の実態を調査し, あわせて使用されている教材等の収集を行い, 今後の教材開発, 支援システム開発に資することである. 今回の日本語教育機関(大学・研究所・高校等)の訪問, 日本語教育担当者との面談, 日本語教育の授業の実見, 日本語教育用教材の収集等を通じて, 次の諸点が明らかになった. (1)現地で市販されている日本語教育用教材が量的に恵まれず, 質的に劣っている. 訪問先の機関は, 日本語の基礎指導を主目的とする高校から, 工学, 医学等の専門領域で用いられる日本語の教授を行う大学まで多様であったが, いずれも, 既存の教材に満足せず, 教授者自らが教材を作成・使用している. これらの者は適切な教材の所在の把握, その入手, 学習者向けの整理等のために, 多大な時間と労力を費やしている. (2)日本語教育担当教師が不足している. 今回訪問した地域の人々の日本語学習に対する需要は極めて高い反面, その教授者の数は著しく少ない. 学生400人に対して, 日本語教員は専任が1人, 非常勧が4人という機関もあり, しかも, 日本語教授法を修得していなくても, 現地の人で日本留学経験があるとか, 現地の長期滞在日本人ということだけで日本語教育を担当している教員もいる. (3)現在, 国立教育研究所が中心となって進めている「パソコンによる外国人のための日本語教育支援システムの開発」(文部省科研費)の成果に寄せる期待が大い. パソコンで日本語教育用の教材情報を提供するシステムは, 上記の問題解決のための有力な手段として, 多くの人々が強い関心に寄せ, そのシステムの利用を希望している. 基礎的な語彙や用例の他に, 実用的な日本語指導を行うために, 例えば, 日本の飲食店のメニューの実物など, 実存するものを映像して提示できるようにしてもらいたい, という要望もある. (4)今後, 海外における日本語教育の質の向上を図るためには, 一段と, 外国人に対する日本語教育に関する研究を推進し, 海外の日本語教育機関との連携を密にし, 日本語教育活動を支援することが必要である.
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