研究概要 |
虚血性心疾患の外科治療において, 冠動脈病変の分布とその進行度を疫学的に調査し, 日中両国の類似性, 差異を明らかにすると同時にAーCバイパス手術など外科治療術後遠隔成績の比較を行なう 虚血性心疾患の外科治療において日本・中国の人類学的・疫学的比較を行なうために, その予備調査研究として今回はまず, 中国人症例における冠動脈病変の分布と進行度とその背景因子について検討を加えた. (1)冠動脈病変分布: 左冠動脈領域では, 左前下行枝近位部狭窄例が約70%に認められ, 次いで鈍角枝, 対角枝に分布していた. また, 時に左冠動脈主幹部90%狭窄例も存在したが, 末梢のrunーoffは比較的良好が多く, この方面の診断技術が修得されてから歴史が浅いせいか若年症例での検査施行結果を反映していることも予測された. また, 冠動脈病変は限局性が大半を占めていた. 右冠動脈領域では狭窄病変は鋭角枝分岐前に存在し, 50〜75%狭窄であった. 左室機能は右前斜位での造影のみの検討では全例駆出率は55%以上でAsynergyの合併例はなかった. (2)病変進行度: 中国における冠動脈造影技術の普及が遅いこともあって検査施行例の年令分布は 42才〜58才と本邦に比較し若く, この影響で狭窄病変は限局, 孤立型が大半を占めていた. (3)背景因子: 対象に用いた20例の分析では, 糖尿病, 高脂血症, 高血圧症の分布は約55%であった.
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