研究概要 |
AIDSの原因ウイルスであるHIVの起源については, 現在アフリカではないかと疑われているが未だ明らかでない. ごく最近により, このHIVと類似のウイルスをアフリカのサルが保有していることが判り, このウイルスがサルからヒトへ伝播したのではないかと疑われている. そこで主としてアフリカにおけるヒト(及びサル)のHIV(及び類似ウイルス)の抗体保有状況を調査してウイルス分離を行い, これらのウイルスの起源を明らかにするとともに, ヒト間, サル間の感染経路を明らかにして, このウイルス侵入に対する防御の方策を考えたい. さらにまだこれらのウイルスに関して調査されていないインド亜大陸におけるヒト及びサルの調査を併せて行う. 1.各種サル類の抗体保有状況の調査とウイルス分離 (1)ケニア霊長類センター飼育ザル計59匹(サイクス28匹,ブルーサイクス2匹,グレイマンガバイ6匹,デブラザ4匹,パプーン7匹,コロブス1匹,アフリカミドリザル11匹)より採血し,今迄にアフリカミドリザル5匹からのSIV分離に成功しており,その他のサルについても現在実験中である. (2)ガボン・フランスヴィユ国際医学研究センターにおいてマンドリル5匹,チンパンジー10匹より採血を行ったところ, マンドリル2匹とチンパンジー3匹がSIV,STLVーI陽性であり, マンドリル2匹からウイルスが分離できた. 今迄に分離したアフリカミドリザル由来株SIV.ナD2AGM.ニD2の抗原蛋白・遺伝子の解析により, SIV.ナD2AGM.ニD2は今迄に報告されたヒトにおけるHIVー1,HIVー2,アカゲザル由来のSIV.ナD2MAC.ニD2とは異なるウイルス群であり, HIVー1・HIVー2群内で認められている多様性があった. これらのことからHIV/SIV群は種属特異的であって, 近年におけるウイルスのサルーヒト間の伝達はなかったものと考えられる. そのことを確認する為に現在SIV.ナD2MND.ニD2の解析を行っており, その他のサル種からのウイルス分離を行っている. 特に類人猿のチンパンジーでSIV抗体陽性例がみつかったことは重要な知見で, そのウイルス分離が急がれる. 2.ヒトの抗体保有状況の調査とウイルス分離 ガーナのAIDS患者を含む計261例の血清のうち, HIVー1抗体陽性例は252例であった. そのうちリンパ球が得られた11例のうちHIVー1抗体陽性の9例からのウイルス分離を行なっている. 今迄の調査からガーナ人においてはHIVー2感染者が多いことが判り, またHIVー2の1株を分離してその解析を行なっているが, 今回の調査によってそれを裏付け, 別のHIVー2株を分離できることを期待している. その解析によりHIVー2群の特性を明らかにできる. また第3のAIDSウイルス分離の可能性もある.
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