研究分担者 |
LALA Moala Vaiola Hospital
SIONE Sengil Vaiola Hospital
江角 真理子 日本大学, 医学部・病理, 講師 (60160363)
内田 俊和 日本大学, 医学部・病理, 助教授 (80060078)
稲葉 裕 順天堂大学, 医学部・衛生学, 助教授 (30010094)
飯野 四郎 東京大学, 医学部・内科, 助手 (30010309)
|
研究概要 |
B型肝炎ウイルスによる肝細胞癌の発生についてはウイルスの核酸が肝細胞に組み込まれることは明らかであるが, 正確な発生機転はまだ明らかでない. 日本の肝細胞癌とアフリカのそれとを比較すると悪い栄養状態が発癌を促進することが推定される. それならが良い栄養状態は発癌を抑制するかということになる. B型肝炎ウイルスのキャリヤーが多しくしかも栄養状態がよい所で肝細胞癌の発生がどのようになっているかトンガで調査するのが本調査研究の目的である. B型肝炎ウイルスによる肝細胞癌の発生に良い栄養状態が如何なる影響を与えるかというトンガでの調査の内, トンガにおけるB型肝炎ウイルスの侵淫度に関しては既に先年度までの調査でほぼ明らかになりそのキャリアー率は15%と高いことが明らかになった. ところが肝細胞癌の発生率に関しては受診率の問題や, 検査の不備などにより今一つその実態がつかめなかった. 今年度はトンガ人が多く移民しており, 医療統計も確かなニュージーランドでトンガ人の肝癌の発生も調査し良い栄養状態がB型肝炎による肝細胞癌の発生を抑制しているかどうか調べた. トンガでの調査では1986年と1987年の2年間に確実な肝細胞癌9例(男8, 女1), 疑診例5例(男2, 女3)を見いだした. 1986年のトンガ王国の国勢調査人口94,535人で割ると, 確実例では年平均人口10万対4.8,疑診例を含めると7.4の発生率になる. 世界人口に平均化すると各々6.4,10.0となる. オークランドでは1980年から1987年までの8年間に90例の肝細胞癌がリストアップされているがそのうちトンガ人は8例, 年平均人口10万対17.95という数値をえた. オークランドの調査は母集団がかならずしもはっきりしないが, トンガでの発生率は日本の福岡(1974ー75), 長崎(1973ー77)の発生率とほぼ等しい数値である. 日本の福岡, 長崎のB型肝炎ウイルスのキャリヤー率が3%, トンガのそれが15%であることを考慮すると, 栄養態がB型肝炎ウイルスによる肝細胞癌発生に抑制的に働いていることが推定される.
|