研究分担者 |
王 〓民 中国科学院, 南京地理研究所, 研究員
施 雅風 中国科学院, 地学部・付主任蘭州氷河凍土研究所, 名誉所長
中谷 周 弘前大学, 理学部, 助教授 (80001626)
由佐 悠紀 京都大学, 理学部・附属地球物理学研究施設, 教授 (90025403)
徳永 英二 中央大学, 経済学部, 教授 (80087147)
田上 龍一 旭川工業高等専門学校, 助教授 (50042081)
浦上 晃一 北海道大学, 理学部, 助教授 (20000870)
鳥居 鉄也 千葉工業大学, 工学部, 教授
|
研究概要 |
汎地球的気候は太陽放射変動を引金として起る北半球の大陸氷床の拡大・縮小が現象を更に増幅し, 氷期, 間永期のドラスチックな気候変動を引き起こしていることが, 最近, 気候変動に関する氷床モデル理論のめざましい進展により, ようやく明らかになりつつある. 一方, 日本列島および中国大陸の気候変動パターンは氷床の拡大・縮小に伴う南北気圧傾度の増減が気候帯の南北移動をもたらす汎地球的傾向が太い縦線を構成するとともに, 氷床の拡大・縮小は南北の気温差の増減, 偏西風の強弱, さらに極東モンスーンの弱化および強化を結果するという横糸の因果関係にも強く左右される. 長い気候変動史の中で日本列島・中国大陸における縦糸, 横糸の変動リズムが汎地球的気候変動とどのようにシンクロナイズし, さらに, これが陸水環境変動へと波及する相互関連の機構を明らかにすることが極めて重要である. 中国大陸にはほぼ北緯45°を中心にしてタリム盆地やモンゴルなど中緯度地帯の乾燥砂漠が広がっている. その乾燥地域の南および南東を縁取る半乾燥地帯には青海高原のツアイダム盆地の塩湖群や中国最大の塩湖青海湖, 黄土高原の運城塩湖, 内蒙古の岱海などの内陸排水の塩湖が多数存在している. この半乾燥地帯の湖環境の変動過程は陸水環境と気候との相互関連を研究する上で恰好の主題を提供している. 約百万年の気候変動の中で青海湖の流域には旧汀線として古水位を刻印している. これを手掛かりに, その水収支的評価から気候変動を読み取ることが可能となる. また, 湖水の塩分濃度変化から湖の拡大, 縮小が及ぼす塩類濃縮過程を水収支史の中でとらえることが出来る. 青海湖は青海高原上に位置する面積4,300km^2の中国最大の内陸塩水湖である. 湖は青蔵高原の東側を占め, 湖面標高は3,193mで, 湖流域は最高5,000mの山地に囲まれた広大な盆地状地形を成している. 現気候の概値は, 年降水量340mm, 年蒸発量950mm, 年平均気温は0.5℃である. 湖周流域面積は35,000km^2である. 同湖の成因は黄河の支川が構造運動に伴う土地隆起により生じた塞止湖と判断される. 湖令は約百万年と云われ, 湖の東方, 日月峠付近の基岩には隆起運動を示す斜向層理が観察される. また, 予備調査によれば湖岸には湖面との比高, 10〜15m, 25〜50mおよび60〜80mの3段の明瞭な広い湖棚平野(湖岸段丘)が拡がり, 湖形成以来, 3回のドラスチックな湖水位変化を示している. 本調査の精密な水収支観測の結果を待たねばならないが, 現在のところ, 広大な湖棚平野の形成する水位調節機能としては地下水流出変動よりもむしろ蒸発面積変化を考えている. 流域外の湧泉帯の水質および予備調査時の水収支の概算値を湖からの分水界漏出を否定している. さらに, 今世紀初頭(1908年)より1987年の現在まで湖水位は低下を続けている. この低下高は約80年に9mで, 青海省地方政府はこの原因に重大な関心を寄せている. 原因として代表者は湖流域の畑地潅漑が拡大し, 流域蒸発散が増大した結果と判断している. 今後の調査により低下傾向の将来予測にも努めたい. また, 高水位期の気候評価には古水収支解析とともに, 比較的弱勢と判断される氷河作用の痕跡および優勢な土石流堆積物の高水位期との時代関連を明らかにすることが重要である. この考察の補助として陸化した鳥島半島において湖底堆積物コアの採取を行なう. また, 青海湖から砂丘により分離した〓海は, 同時に布哈河および通沙柳河などの涵養源から切り離された. このため〓海には青海湖より地下水流入が起り, 青海湖水を再濃縮した. このため青海湖に較べ〓海が高塩分に達していることも興味深い事実である.
|