研究概要 |
南方海域ではさんご礁に生育する微小生物の生産する毒素が魚類に蓄積され, 保健衛生, 沿岸漁業, 環境対策に重大な障害となる. 本研究ではシガトキシン, マイトトキシン, パリトキシンの3つの毒について, 魚類の汚染状況の実態を調査し, 対策樹立のための基礎資料を得ることを目的とする. 本年度は63年度の本調査にむけて, 現地関係者との打合せ, および予備的調査を行う. I.昭和62年度の予備調査は, 次年度に予定している本調査をもっとも効果的に実施するための調査地点の選定に重点を置いた. 調査項目は下記のとおりである. 1.水産・保健関係者との面談による魚類毒化状況についての情報収集 2.代表的毒化魚種の大量入手の可能性, 試料の保管, 運搬手段の有無の調査 3.代表者毒化魚種を採集して持ち帰り, 分析を行って, 毒化状況を確認する. II.情報提供, 試料採集協力研究者 ミクロネシア州連合海洋資源局長M.Gawel博士, ミクロネシア短期大学A.Edwards講師 北マリアナ諸島連邦資源局長N.Guererro氏及び自然動物部長A.Polacio氏 仏領ポリネシア, ルイ・マラルデ医学研究所所長J.Roue教授及び, R.Bagnis博士 III.採集試料:バラフエダイ,ウツボ類,クロモンガラ,フグ類 IV.調査結果の概要 ミクロネシア州連合ピンゲラップ島で瀕発した魚類毒化は終息に向いつつあり, 採集試料の分析でも裏付れられた. 試料の入手, 保管, 運搬にも困難な点が多い. サンパン島ではバラフエダイ等は販売を禁止されているので中毒発生は少い. 試料入手, 保管, 運搬には問題はなく, 試料14検体中2検体が有毒であった. しかし, 採集地域が特定できず, 環境要因との対応が困難と考えられた. 仏領ポリネシアのタヒチ島周辺で採集した魚類の毒性は低かった. しかし, 同地域では毎年1,000人を超す中毒患者が発生しており, 調査地域をツアモツ島等に選定すれば, 充分調査が実施できると考えられた. また, 毒化関連微細藻類を実際に採集し, 培養株を持ち帰ることもできた. ルイ・マラルデ医学研究所の施設を利用することも可能であり, 仏領ポリネシアは本調査の実施にもっとも適した地域であると判断された.
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