研究概要 |
明治初期に活躍していた狩野派,風俗画の絵師であった河鍋暁斎(1831ー89)の作品は,当時来日した外国人に好まれ,その代表作の大半が欧米に流出した. そのため近代日本美術史では,この時代が日本美術の空白期とされるほどである. イギリス,フランス.西ドイツ,オランダ,アメリカの各地美術館に収蔵されている暁斎の作品を調査, 研究し,その作品目録の作成と明治初期美術史の見直しが,この調査の目的である. あらかじめ文書によって調査,研究対象を具体的に連絡しておいたため各地美術館においても友好的,積極的な協力が得られ,予期以上の成果が得られた. イギリスの大英博物館には約100点の肉筆画が所蔵されており,全作品のデータ(サイズ,番号その他)を取ると共に,カラースライド作成を依頼し入手した. またヴィクトリア&アルバート美術館では,約90点の肉筆画を確認し,同様にデータを取り,かつ撮影許可を得たので,全作品をカラー・スライドに撮った. フランスのギメ美術館では,約10点の肉筆画,3冊の画稿,40点の肉筆絵日記を確認し,一部を撮影,残りをフランス国立美術館連盟写真部から購入した. 西ドイツのハイネルベルク大学では,整理中のベルツ・コレクションを点検し,凡そ1,000点の狩野派作品中から25点余の暁斎作品を確認し,撮影した. オランダのライテン民俗博物館には700点余の肉筆画があり,ほぼ全作品を調査,撮影した. アメリカではメトロポリタン美術館で約50点,ボストン美術館で6点,フリア美術館で約200点,ピーボティー美術館で10点の作品を確認し,すべてを調査,撮影した. トータルが作品数凡そ1,200点を確認したが,これは予想を上回る成果であった. 帰国後はこれらの整理,年代確定等の作業を行なっている. なお現地調査中に様々な情報を得て,ハイファ,エジンバラ,ハンブルク,ライプツィヒ,シカゴ,ロスアンゼルス等々にも大量のコレクションが存在することが判明した. 本年度の本調査において,それらの一部を確認する予定である.
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