研究概要 |
日華植物区系の植物の系統と分化についての知見に寄与するため,云南省横断山脈の麗江附近の植物を調査し,研究のための資料を収集した.1984年の点〓山の調査と合わせて,ヒマラヤ・云南・日本の植物の対比を行い,この地域における種分化の研究のための基礎的知見,資料の収集を行うことを目的とした. 野外調査においては,麗江雲の王友雪をはじめ,植物学的調査の不充分だった地域を含め,広範囲にわたる地域で,自生植物の多様性を比較観察し,研究用の資料標本等の収集を行った. 調査地点は高度1550mから4200mに及び,原生林から,人為的開発の進んだ場所までを含んでいる. 収集した資料標本は,番号で1724,点数にして6500点を含んでいる. これらの標本は,基礎データのラベルを附し,仮同定を行い,昆明植物研究所と東京大学に各1組収納して研究資料に供するほか,他の2組はそれぞれ大英博物館とハーバード大学に送付し,同数の交換標本(中国,ヒマラヤ地域のもの)を東京大学に受領する予定である. また,染色体観察用の固定標本190点と,比較形態学研究用の液浸標本も得,これらにもとずいた予備的研究を行った. 研究所ハーバリウムでは,シダ植物,ベンケイソウ科,ユキノシタ科を中心に,ヒマラヤ,云南,日本を軸にした植物の地理的分化をあとづける比較研究を行った.この研究は,収集して持ち帰った資料標本の研究に引き継がれ,さらに解析が進められている.
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