研究概要 |
プレートの沈み込みを伴わないプレート衝突境界に位置するトルコの火山地帯・地熱地帯の地学現象を, 日本列島のようにプレートの沈み込みを伴った火山地帯・地熱地帯での地学現象と比較研究しようとするものである. 本年度は来年度に行なわれる予定の本調査の打合せおよび調査地域の下見と予備試料の採集が主たる目的であった. トルコ側との話し合いでは, 彼等は日本側の地球化学的研究の計画に賛同しており, 一致協力して調査研究を行う旨の確認を行った. トルコ東部の国境地帯はこれまであまり調査が進んでいない所であったが, その地域における火山(ネムルート, スハン, メイダン, エトリュスク, アララト)において予備的な岩石およびガス試料の採集を行った. またこの地域の地震に伴い災害の原因になった炭酸ガス噴出のガス試料も採取した. 東部地域から首都アンカラへの帰路中部地域の火山(カラカ, ハサン, カラピナール)においても同様の試料を採集し, 合計26個の岩石試料, 15個のガスおよび水試料を持ち帰った. これらは帰国後本調査の研究組織メンバーにより岩石試料の薄片の顕微鏡観察, 主成分, 微量成分元素の定量(螢光X線および中性子放射能分析), Sr同位体比, KーAr年代決定, またガス試料については希ガス含有量, He同位体比, 炭素同位体比の決定を行なった. これらの分析結果を予備測定結果として1冊レポートにまとめた(添付資料参照). ガス試料の^3He/^4He比は大気とマントルHeの混合を示唆しているがマントルHeの^3He/^4He比は日本の値と同様であった. Sr同位体比の結果からはアラビアプレート上にあると思われているカラカ火山の試料について非常に低い値が得られたことからやはり他の地域の火山と異なることが知れた. またトルコの岩石は日本の岩石に比べてK.ナ_<2.ニ>OやNa.ナ_<2.ニ>Oなどアルカリ元素が多いことなどが特徴として得られた. これらの結果は上部マントルでの火山成分の違いが, マグマと地殻の相互作用がトルコと日本の火山では異なっていることを示しており, 本調査でさらに詳細に研究されることになる.
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