研究概要 |
イエール大学図書館所蔵の日本文学資料を中心にプリンストン大学図書館, シアトル市美術館における日本文学資料の所蔵状況について予備的な調査を行う. 今年度は予備調査であったので, 次年度の本調査に向けて資料の全容や蔵書傾向などの実体把握及び調査の具体的な段取りの立案を目標にしたが, おおよそ当初の目的は達成することができた. まず, イエール大学のバイネッキ図書館所蔵の朝河貫一コレクションを中心に調査を行ったが, 約一千点以上もの国文学及び古記録の貴重な資料が所蔵されており, 二百点程緊急に試掘的な調査を試みた. その結果, 来年度の本調査でほぼ完了できる見込みがたった. さらにイエール大学では, このバイネッキ図書館以外にも東アジア図書館になお全く未調査の百点位の和書があり, 国内では書名はもとよりその存在さえ知られていなかった誠に貴重な鎌倉時代後期の古写本が所蔵されていることが判明した. 次にプリンストン大学のジェスト・オリエント図書館, ファイアーストーン図書館, シャイデコレクション, 付属美術館等々を調査したが, 点数は多くはないものの, 従来から知られている奈良絵本ばかりでなく, 鎌倉末期の書写になる仏書の存在が明らかになったのは貴重な成果であった. 最後にシアトル市立美術館を調査した. 国文学研究に欠かせない絵巻の所蔵が多く, これまた多大な成果をあげることができた. 以上, 短期間の調査ではあったが, 予想以上に在米の国文学資料は質量共に充実しており, 本格的な調査と収集が急務であることを再認識するとともに, 来年度の調査の足掛かりを得ることができた.
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