研究分担者 |
秋元 信一 北海道大学, 農学部, 助手 (30175161)
斎藤 裕 北海道大学, 農学部, 助手 (20142698)
久万田 敏夫 北海道大学, 農学部, 助教授 (50001425)
高木 貞夫 北海道大学, 農学部, 教授 (70001427)
笹川 満廣 京都府立大学, 農学部, 教授 (20046410)
SAITO Yutaka Institute of Applied Zoology, Faculty of Agriculture, Hokkaido University
SASAKAWA Mitsuhiro Entomological Laboratory, Faculty of Agriculture, Kyoto Prefectural University
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研究概要 |
1986年度の「東南アジアにおける植物寄生性微小節足動物の生態・進化に関する研究」プロジェクトによってマレーシア(マレー半島)において採集したダニ類及び微小昆虫類の液浸及び乾燥標本について,それぞれの研究分担者によってプレパラート標本をはじめとする永久標本の作成を行った. 標本数がきわめて多いために短期間ですべての標本を作成できないグループについては,採集植物毎に一部を取り出してサンプル標本を作りそれを基に属名や種名をできるだけ特定する努力を重ねた. 成果の概要は以下の通りである. 1.ハダニ類においては7属18種の存在を確認し,アブラムシでは約55種が確認された. これらのは熱帯降雨林のこれらのグループの記載がきわめて少なかった現状からみて価値のある成果であった. その他のダニ類についても興味深い種の存在を確認した. 一部のグループはわが国における種との共通性が高く両国の生物地理学的関係の電要さが示唆された. しかし,多くの種は未記載種である可能性が高く,今後多くのアジア諸国での詳細な研究が必要とされる. 2.補食性ダニ類ではカブリダニ科,ナガヒシダニ科およびツメダニ科の種が確認された. 本調査で発見されたツメダニの1種を1986年の調査時に植物防疫所の許可を得てわが国に持ち帰り,研究室で飼育実験を行った結果,それが特異な社会性を示すことが本総括研究の過程で明らかにされた. このような生活型を持つダニはこれまでまったくしられておらず,生態学的にみてきわめて重要な発見である. 3.カイガラムシ類については63属300種におよぶ標本が得られ,新属新種とみられるものが多くを占めている. 現在までに一部の属の特定と上位分類群での整理が完了した. 今度の詳しい研究によってわが国のマレーシアとの生物相の差異と類似性が明確になるに従って,生物地理学上の重要な知見をもたらすであろう. 4.潜葉性ガ類についてもきわめて多数の標本が得られた. 標本の作成をほぼ完了し,現在までに112種を確認し上位分類群での整理がほぼ完了した. 採集された種はきわめて多様でありまた多くの新種を含んでいる. 5.ハモグリバエ類については,採集された標本のはべてを永久標本とする作業を終わり,ほとんどの種の特定が完了した. 現在,そのなかで新種であったものについては,マレーシア側の共同研究者との共著論文として投稿中である. また,30種のキジラミ類及び50種のコナジラミ類が見いだされた. これらについては,採集標本の整理がほぼ完了し,キジラミ類のうち20種はわが国の種と多少とも関連があることが判明している. 総括研究を通じて,今回の海外調査が成功裡に進展していることが示された. これらの成果はきわめて多岐にわたっているために本報告書においては概略を述べることにとどめ,添付の本研究年次報告書としてまとめた. これを広く国内の関連研究機関に配布するとともにマレーシアの関係機関・研究所等に配布する予定である. 1986年の調査においてマレーシア側の共同研究の責任者である,マレーシア森林研究所産業技術部長兼昆虫学主任のトー・ヨー・ボン博士が本総括研究経費によって来日し,熱帯昆虫の種の多様性およびそれらの森林保護上の意義についての意見交換を北海道および京都において行うとともに,研究成果の現地への還元方法,研究成果のとりまとめ方法,標本の保存管理についてそれぞれの研究分担者と協議を行った. その結果,マレーシアにおける植物寄生性微小節足動物の研究の重要性について意見の一致をみるとともに,今後さらにこの線に沿った研究を発展させるべきという点で合意が得られた.
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