研究分担者 |
JEAN Jacq1es モントリオール大学, 音楽学部, 教授
LEORARD Kame アラスカ大学, フィルム研究所, 所員
森田 稔 宮城教育大学, 教育学部, 文部教官教授 (80003292)
JEAN Jacques NATTIEZ Professor of University of Montreal
KAMERLING Leonard A staff of Alaskan Native Film Heritage Project
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研究概要 |
60年度,61年度の2年間に4次にわたって実施された現実調査によって得られた400本の録音テープ(400時間),150本のビデオ・テープ(150時間),および写真フィルム等の整理, 複製,編集が終了した. 音楽の分析・研究のための採譜および音楽地図作製の作業は継続中である. これらの資料は北海道教育大学札幌分校・音楽研究室に保管するが,資料の一部は国立民族学博物館,Ethnology Division of theる. アラスカ・ベーリング海域からカナダ・バフィン島まで,北米大陸の北極圏のエスキモー集落の主要なところをカバーすることの出来た本調査により,緊急に保存を要するエスキモー伝承芸能の記録を行なうことが出来たと同時に,これまで明らかでなかったエスキモーの伝承芸能の全容が,各地域間の比較研究を基に明らかにすることが出来た. これはシベシア大陸から北米大陸への民族移動及び文化の伝播の状況を綜合的に研究するために重要なものと考えられる. この調査・研究で得られた新たな知見のいくつかを以下に例示する. 1.ドラム・ダンスの太鼓の叩き方踊り方等から,ベーリング海沿岸地域は鯨猟という共同労働を反映した独特の演奏形態(グループでの太鼓と踊り)により,一つの芸能圏(文化圏)を形成している,さらにこの芸能圏にへだてられている地域,西のシベリア(アジア・エスキモー,チュクチを除き)と東のカナダ・エスキモーにかえって共通する要素が多く(独りで太鼓叩き踊る等),生業形態と芸能による表現との間に個有の関係があることを具体的に示している. 2.喉鳴らし遊びは,シベリア(アイヌを含め)とカナダ東部(ハドソン湾沿岸地域)にだけ存在し,アラスカとカナダ中・西部にはみられない. 文化要素陥没の一つの例として東西の文化要素の移動,定着に興味ある例を提供している. 3.北米大陸,シベリア大陸全域にわたって共通する遊びの中の特徴は,その競技的性格である. したがって2人または2組で行なうものが多いと同時に,笑いをさそうユーモラスな動作を付与しているものも多い. これは対抗と協調という矛盾を克服する手段として,エスキモー社会の存続の要件の一つであったと考えられる. 4.エスキモーの芸能の基底にシャマニズムがあり,シャーマンの巫術の内容が,鳥や動物の鳴き声の擬声音とか,人工的に変化させられる特別の音声等異体的な形で芸能の中に示されている.
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