研究概要 |
1986年8, 9月にニイラゴンゴ, ニアムラギラ火山において, 火山の深部および浅部の熱的構造, 火山活動と地溝帯運動の関連性を研究するため, 地震, 地磁気の観測, 比抵抗の測定, 辺長・水準測量および火山岩の採集を実施した. 87年度に実施した解析・分析結果は下記のように要約される. (1)ニイラゴンゴ火山の溶岩湖活動 1982年6月21日再現した溶岩湖の表面高度は火口縁から400m下に達した後, 固化している. 赤外線温度計による表面温度は数度程度であり, 溶岩の流動活動を示す長周期微動も観測されないことから, 再開した溶岩湖は現在も引き続き冷却状態にあると考えられる. (2)地溝帯の地震活動 火山下15km〜20kmに発生する長周期地震の発生頻度は依然高い水準にある. しかし両火山間の断層割れ目に関連した地震の発生は少なかった. このことは火山下深部のマグマ活動の活発さを意味している. (3)ニアムラギラ火山の側噴火 観測開始直前の7月16日ニアムラギラ南麓で噴火が発生し, 溶岩流とスコリア丘を形成し, 8月20日に活動は終了した. この噴火地点に観測基地を設置し, 噴火経過の観察, 地震観測, 地殻変動の観測等を実施した. その結果, スコリア噴出物は12×10^6m^3, 溶岩流は38×10^6m^3で総噴出量は50×10^6m^3である. 南北に延びる火口列の下に微動が, 火口列の延長上に多数のB型地震が発生した. B型地震の震源分布の中深さ1km付近まで地震の発生していない領域が存在する. この地震の空白域は火道, 即ちマグマの存在する場所を示している. 地殻傾斜変動は噴火終了後, 火口の南西方向に沈降する傾斜変動を示した. (4)ニアムラギラ火口の辺長変化 1984年までの変化は山体の膨張傾向を示していたが, 1986年の噴火後は, NEーSW方向にのみ縮みが見られる. 4回の噴火を挟んでの変動量は1×10^<-5>のオーダーとなる. (5)地溝帯を横断する辺長変化 変動量は, 4年間で0.5ー2×10^<-6>と小さく, 現在のところ地溝帯の拡大傾向を認められない. (6)地溝帯の熱構造 ゴマなど4地点で行なった地磁気観測による得られたインダクションベクトルは, 1900年代に噴火地点の連なりの方向に向いている. これは噴火地点の連なりに沿って内部に誘導電流が流れている, 即ち, 電気伝導度が高いことを示している. さらに地磁気変化と関係のない地電流の流れの方向もこの結果を支持している. 高温であると考えられる良導体は地下2kmから9kmの深さにあると推定された. (7)火山岩の組成変化 ニアムラギラの側噴火で噴出したマグマのK.ナ_<2.ニ>Oは3.30%から3.15%に減少し, MgO・CaOはそれぞれ4.9%から5.2%, 10.0%から10.2%へ増加した. また, 全鉄/MgO比も2.5から2.4に減少した. したがって, 86年の噴出物は, 下方に向かってマフィックになるような成層したマグマ溜まりからもたらされたと考えられる. 上記の結果は, 地溝帯深部のマグマ活動が活発であり, 今後ニイラゴンゴの溶岩湖活動の再活発化や噴火が頻発する可能性を示している.
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