研究概要 |
ブラジル北東部は, 約1,550,000km^2の面積を有に, 一般に三つの生態地域ー沿岸部の湿潤な森林帯, 内陸の半乾燥帯, そして, これら二つの地帯の移行帯ーから成り立っている. 沿岸地帯は, 植民地時代の初めから開発されたのであるが, その開発が進むにつれて内陸の半乾燥帯も開発されるようになった. そして, 人口も序々に増加し, 1940年代に入ると, それが南のサンパウロ州などにおけるとほぼ同様な増加率で急激に増加し始めた. 人口の急激な増加には, 当然それに伴う人間活動が自然生態に影響を及ぼし, 土地の劣悪化, すなわち, 「砂漠化」を招くであろう. 元来, このブラジル北東部の半乾帯は, 日射が強いのに, 降水量が少なく, その上降水量の年々の変動が著しい土地で, 「砂漠化」に対しては脆弱な土地である. 本研究は, ブラジル北東部半乾燥地域における人間活動による土地の劣悪化の諸過程を明らかにすることを目的として計画され, 実施された. その結果は次のようなものである. (1)気候・気象関係 1)降水量の分布とその年々変動 SUDENE などで入手した資料を解析し, その年々変動が北部ノルデステと南ノルデステと異なること, 北部ノルデステと南部ブラジルにおける降水量の間には頁の相関があり, 南北振動がみられ, これがニル・ニーニョと関係することが判明した. 2)ノルデステにおける水収支とその年々の変動 SUDENE で入手した資料からノルデステの水収支を計算し, その変動の地域性を求めた. 3)微気象の観測カーチンガ内と耕地内の微気象観測を実施し, 貴重な資料を得た. (2)植物生態関係 1)カーチンガの物質生産パトス及びカンピナグランデにおいて, カーチンガの物質生産の調査を実施し, 貴重な結集を得た 2)土じょう改良実験カーチンガのリターを集めて, カーチンガの土じょうに混合させ, その土じょうトウモロコシの種子を播き, その成長量のポット実験を行ったところ, リターの混合率の大きいもの程成長量が大きいことがわかった. (3)土地利用関係 1)ブラジル北東部の半乾燥地域の土地利用を検討するため, パトス北西部のCampo Alegreおよびとカンヒナブランデ西部のSitio Asude de Pedraの二地点3×4km=12km^2を定点に設定し, 詳細な土地利用調査を行った. その結果, 前者では5〜10年でカーチンガを伐採し, 牧場ーカポエラーカーチンガと推移する土地利用の短期的ローテーションが一般的であるのに対し, 後者では耕地一牧場ーカーチンガという土地利用が60年前後で推移する土地利用サイクルが支配的であることがわかった. その他にも貴重な結果が得られた. (4)水利用調査 パトスを中心に生活水の利用状況を調べ1971年の調査と比較しその変化状況を明らかにした.
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