研究概要 |
研究成果は以下の主として6部からなる. すなわち,1:熱帯中国の季節風と寒波,雨季と乾季,2:熱帯中国の小気候,3:海南島におけるゴム園の微気象,4:雲南の土壌とその生成因子としての気候,5:熱帯中国の自然植生・人工植生,6:熱帯中国ー雲南ーにおける農業的土地利用とその特色である. 1.熱帯中国の季節風と寒波,雨季と乾季・・・・・・中国の南部は寒波のほぼ南限に位置する. 寒波は1月にもっとも回数が多く,次いで2月・12月の順である. 地域的には広東が83回,広西が46回,雲南が52回で東部の回数が多い. 寒波は経路と規模によって3つの型に分類される. A型は中国北部から直接中国南部に浸入する. B型は卓越風系が2つあり,1つは華北の偏西風,他は局地的な北〜北東の気流系で,とくに揚子江南部の局地高気圧の影響が強い. C型は西〜北西の強い卓越風が東アジア全域に卓越するが,中国南部には寒波は来ない. B型は全体の45%を占め,広東省の寒波の主な原因となる. 2.熱帯中国の小気候ー西双版納,景洪・孟力養盆地の冷気湖と霧・・・・・・西双版納においては冷霧季(10月下旬〜11月下旬)と寒霧季(12月上旬〜2月中旬)には盆地や谷間において霧の発生頻度が高い. 斜面の定点観測,移動観測,係留気球観測により,冷気湖の形成過程を明らかにした. 両盆地とも19時前後に形成され始める. 時間とともに厚さが増し23時には300m,2時には400mに達する. 霧は2時項出現し12時項に消滅する. 霧の厚さは8〜11時に最大になる. 3.海南島におけるゴム園の微気象・・・・・・1986年4月には,ゴム園内(林段観測点)と園外(花果山観測点)に建設された高さ30mの鉄塔に温度計・湿度計,風速計,日射計,純放射計,雨量計,蒸発計などを配置し,微気象システムが完成し,観測を開始した. 12月からの日射の記録によれば,天気の良い日には30分間で1500kj/m^2を上回る強い日射があるが,1月24日から28日の移流型の低温時には500kj/m^2にも達しない. 4.雲南の土壌とその生成因子としての気候・・・・・・調査地域の気候は緩かさの指数では,標高900m以下が亜熱帯域,900m以下が緩温帯域になる. しかし,水不足量dをみると,南西諸島では3年に1度,5〜10月の高温期に出現する. 雲南では毎年12〜6月の間,毎月dが出現する. 雲南では緩温帯域に赤色土が分布し,亜熱帯域に属するのはラテライト性赤色土または准ラトソルである. これは雲南における現成土壌の母材が古いためか毎年の乾湿の繰り返しが効果的に働いているためかであろう. 5.熱帯中国の自然植生・人工植生・・・・・・熱帯中国の熱帯雨林は,海南島南東部,広西チワン族自治区や雲南省の最南部にみられるにすぎない. 雲南省の南部の乾季をもつ熱帯には季節風林が発達する. 冬季には森林の上層に落葉がみられる. 山地には山地雨林が海抜500m〜1500mに分布している. 横断山脈の河谷には谷底に沿ってサバンナ型の植生がある. これには夏季の高温と乾燥,冬季の冷気移流が関係している. ゴム・かんきつ類・茶・サトウキビ・サイザル麻などの熱帯作物が広く栽培され,水田・焼畑・伐採地・人工林などが人工植生となる. 局地気候の変化や地力の低下が大きな問題となっている. 6.熱帯中国ー雲南ーにおける農業的土地利用・・・・・・農業的土地利用は垂直方向の変化がきわめて大きい. これを"立体気候・立体農業"と呼ぶ. 海抜1700〜2000mの層は「一年両熟」(1年2作)で,1300〜1700mは「両年五熟」(2年5作),1300m以下は一般に水稲の二期作が可能な「一年三熟」でしかも天然ゴム生産の貴重な地域になっている. 山地民による焼き畑耕作(刀耕火種)は,主として800〜1200m層にみられ,陸稲と玉米(トウモロコシ)が主生産物である. しかし近年では, 天然ゴム栽培が急速に普及してきている. 斜面の向きや冬季の気温の逆転層の限界と山地民の集落立地・土地利用などとの関連も明らかである.
|