研究分担者 |
加藤 博 東洋大学, 文学部, 専任講師 (10134636)
栗原 尚子 お茶の水女子大学, 文教育学部, 助教授 (80017623)
中沢 勝三 弘前大学, 人文学部, 助教授 (70113818)
松木 栄三 宇都宮大学, 教養部, 教授 (50008033)
清水 廣一郎 東京都立大学, 人文学部, 教授 (00015380)
中村 喜和 一橋大学, 社会学部, 教授 (40012356)
林 武 大東文化大学, 国際関係学部, 教授 (50189651)
直野 敦 東京大学, 教養学部, 教授 (00012435)
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研究概要 |
海外学術調査は1986年度に, エジプト・ギリシャ・イタリア・スペイン・シリア・ユーゴスラヴィアにて行なわれた. 共通の調査課題は, (1)都市周縁部経済のインフォーマル・セクターの特徴, (2)歴史的都心部と都市周縁部との社会的・文化的コントラスト, (3)都市および国家のコンテクストにおける中心と周縁との間の社会的関係, (4)港湾活動と地中海都市固有の都市構造であった. アレキサンドリア・テッサロニキ・パレルモ・・ピサ・バルセロナ・アレッポ・ドブロブニクの諸都市における調査結果の比較討論を通じて, インフォーマル・セクター, パトロンークライアント関係, 居住のセグレゲイション等これらの都市に共通する重要な特徴を見出だした. 勿論, これらの現象形態は, それぞれの都市が置かれている歴史的および社会・経済的条件を反映して異なっておりこれらもまた重要な研究課題となった. 都市周縁部に見られる現象は, 地理的周縁部(郊外・新たな市街地)に限定されるのではなく, パレルモの事例にみられるように, 歴史的都心部にも見出だせるものである. しかしその場合にも, それは欧米都市のインナーシティとちがい, その形成は都市政策の失敗または歪みにきせられることが多い. しかしながら, 現在, 都市の郊外地域は, 民族的多様性, 居住・環境改善を求める市民の運動, 大衆文化の新たな形成等により, 社会・経済的ダイナミックスを示している地域でもある. これについては, 特にアレッポ, バルセロナについての詳細な研究がなされた. 歴史的視点からみれば, 地中海諸国の沿岸都市においては, 港湾活動はつねに都市経済にとっても最も重要な経済部門であった. 多くの港湾都市は現在でもその地域の中心であるが, その主要な機能は港湾活動との関連というよりも, その後背地域との関連で行政的および第三次産業の比重が増大している. スペイン・イタリア・ユゴスラヴィアでは, 過去の商業活動の衰退過程に焦点をあてて調査を行った. いくつかの古文書館に保管されているマニュススクリプトなどのオリジナルな史料にあたっての分析に基づく歴史研究から, 多くの事例において, 近年の都市構造の発達が, 歴史的時間が明白に異なっているにもかかわらず, 過去の形態を引き継ぎ連続性を有していることを検証すことができた. 宗教的に見れば, 地中海地域はカトリック, ギリシャ正教, イスラムなどきわめて多様な世界である. このような違いが都市周辺部の文化にどのように表われているかということも, 比較検討の対象になった. 共通課題に関する各々の都市の事例研究については, 研究分担者全員が欧文により, 研究成果報告「Mediterranean Cities(地中海諸都市に関する比較研究)」に研究成果を執筆している.
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