研究分担者 |
木内 文之 金沢大学, 薬学部, 教務職員 (60161402)
田村 俊秀 兵庫医科大学, 医学部, 助教授 (70029792)
小島 覚 富山大学, 教養部, 教授 (80115138)
富森 毅 北陸大学, 薬学部, 教授 (30100506)
御影 雅幸 富山医科薬科大学, 和漢薬研究所, 助手 (50115193)
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研究概要 |
1.調査地における薬物資源の種類を明らかにする目的で,現地調査で採集した薬用植物をはじめとする有用値物の同定を各方面の専門家の協力を得て行ない, 1983年度の調査結果をも加え, ネパール・ダウラギリ及びアンナプルナ周辺における薬物資源調査結果として, 有用植物名, 現地名, 薬用部位, 効能, 情報提供者などを一覧表にまとめた. さらに, 表には現地における有用植物名のリストとしての役割をも持たせ, 利用の便を図るためにチベット文化圏とネパール文化圏とに分け, また現地における主要な疾病別にその治療に用いられる薬用植物をまためた. 2.現地調査で入手したチベット薬物, 漢薬(中国薬物), アーユルヴェーダ薬物などをビンに詰め, 資料番号を付して整理した. また広く他の研究者の利用の便宜を図るため, 現在富山医科薬科大学和漢薬研究所 民族薬物資料館に所蔵されているチベット薬物の一覧表を, 過去に蒐集したものをも加えて作成した. なお表には可能な限り, チベット文字による薬物名をも付した. 3.現地調査でアムチから入手したチベット薬物書「NAD SMAN SPUROD P'I NAMS YIG BZHUGS PO」を全文英訳した. 4.今回の調査においてカトマナズで入手したアーユルヴェーダ薬物160種類の, イヌ回虫に対する殺虫活性のスクリーニングを行なった. 5.カリガンダキ川上流域における薬用植物の植生と自然環境の相互関係を調査研究し, 興味ある知見を得た. それと並行して, マオウ科のEphedra属植物の成育環境の違いによる形態とアルカロイド含量の変化を調査し, その結果環境の悪い土地に成育するものほど節間が短くアルカロイド含量が高い傾向にあるという新知見を得た. 6.新薬物資源開発の目的で, ノウゼンカズラ科のOroxylum indicumの果実に由来するアーユルヴェーダ薬物, シソ科のScutellaria scandensの葉および根, マメ科のSophora moorcrofianaの根, ウコギ科のPanax pseudoーginseng subsp.himalaicusの根茎, ならびにオシロイバナ科のBoerhaavia diffusaの根に含有されるフラボノイド成分を始めとする成分研究を行ない, 多くの新知見を得た. 7.漢薬(中国薬物)「人参葉」の研究の一環として, ヒマラヤ地区に産するPanax pseudoーginseng subsp.himalaicusの地上部を比較組織学的に研究した. 8.チベット医学で使用される薬物の基源を解明する目的で, チベット医学に独自な高山性薬物「JAーGOD POE」および「MEーTOG JAーKANG」の原植物を比較組織学的に検討し, それらがキンポウゲ科のDelphinium属植物数種の開花期の地上部に由来するものであることを明らかにした. 9.ネパールにおける伝染性疾患の現状を検討し, その正しい治療方法や予防法などを考察し, 現地旅行者が心得るべき事項を出版物として紹介した. 10.以上の成果を広く一般に公開するため, 昭和62年10月22日から一週間, 富山市の西武百貨店7階催事場にて展示報告会を開催した.
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