研究分担者 |
ILMARI Haapa ヘルシンキ大学, 地質学鉱物学科, 教授
松尾 禎士 東京工業大学, 理学部, 教授 (30015490)
丸山 孝彦 秋田大学, 鉱山学部, 助教授 (60006682)
森清 寿郎 信州大学, 理学部, 助手 (90115379)
山田 哲雄 信州大学, 理学部, 教授 (30020647)
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研究概要 |
昭和61年度海外学術調査によってフィンランド南部,東部および北部地域の野外調査でヘルシンキ大学およびフィンランド地質調査所の協力を得て,約500地点から総計1.5トンの岩石試料を持ち帰った. 1.これらの試料のうち,61年度はラパキビ花崗岩のヴィボルグ岩体のものについて鉱物分離・同位体比測定,化学分析を集中的におこなった. 2.62年度は引き続いて他のラパキビ花崗岩(オラン島岩体,ラィティラ岩体,ベヘマ岩体)と始生代の基盤花崗岩類およびスベコカレリアン変動帯の花崗岩について同様の分析をおこなった. 3.フィンランドのラパキビ花崗岩は,角閃石・黒雲母ともに含水量が少なく, XFe(Feo/Feo+MgO)が高く, 角閃石と黒雲母のδD値に大きな差があって,しかも前者の方の水が軽いという共通性がある. しかし,角閃石・黒雲母ともに緑泥石化するとδD値が重くなる. オラン島岩体ではひろく緑泥石化か認められ, それらのδD値は30〜40%重い. このような重い水は,花崗岩マグマの水と異なる起源がどうか,今のところ不明である. 4.始生代花崗岩の水素同位体的特徴は,明らかにラパキビ花崗岩のそれとは違うことはわかったが,分析試料数が増えた段階で,日本の花崗岩などとどのように違うのか比較検討したい. 5.62年度には11月7日〜12月4日にフィンランド・ヘルシンキ大学のハーパラ教授を招へいして,それまでに得られた分析結果について,それぞれの試料について産状・鉱物学的特徴と水素同位体比について討論した. そして同時に,日本の若い地質時代の花崗岩の産状と水素同位体的特徴について,野外で実地において討論もできた. 6.上述の通りラパキビ花崗岩の角閃石・黒雲母の水素同位体的特徴はきわめて特殊なもので,日本産のこれまで我々が研究した限りでの花崗岩類とは著しく違っている. このラパキビ型花崗岩が全地球的に同じ特徴をもっているかどうかは今のところわからない. もし全地球的規模でラパキヒ型花崗岩の特徴が共通するものであれば,地球の発展史の中で,ラパキビ期のマグマの水の特異性を考究しなければならない.
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