研究分担者 |
タムロン プレンプリディ チェラロンコン大学, 工学部, 教授
岩崎 正美 鳥取大学, 農学部, 助教授 (60032299)
亀岡 孝治 三重大学, 生物資源学部(農学部), 助手 (90177600)
木本 凱夫 三重大学, 生物資源学部(農学部), 助教授 (30024590)
小池 正之 筑波大学, 農林工学系, 助教授 (60032306)
THAMRONG Prempridi Chulalongkorn University・Faculty of Engneering・Professor
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研究概要 |
本研究は農具と農法を中心にして, 東南アジアの農業技術の歴史的変遷過程や技術的特質並びに現地適応性に関する調査を行ない, 適正技術のあり方に関する学術的基礎資料を学際的立場から得ようとした. 現地調査は1986年8月〜9月にタイおよびマレーシアにて実施された. タイではチェラロンコン大学, カセサート大学およびコンケン大学の協力を得, またマレーシアではマレーシア農科大学の全面的協力を得た. また1987年10月には調査総括の一環として実施したセミナーにタイの現地研究分担者タムロン・プレンプリディを招へいし, 在来農具と適正技術との関りにつき現地の立場からの見解を求めた. 研究成果の概要を以下に列挙する. 1.在来農具についてはタイ, マレーシアにおいて耕うん, 代かき, 田植え, 除草管理, 収穫, 加工, 調製に用いられるものにつき調査・分析した. 比較的大きなものは写真撮影と主要諸元の測定, 小型のものはスケッチによる作図を行なった. またその機能, 作業方式等につき現地調査と聞き取り調査を行なった. これをもとに在来農具の各種自然環境や作物への適応性につき分析した. 2.また在来農具の代表的なものを持ち帰り鳥取県工業試験場において各種金属組織試験を実施し, それらの材料と製法につき分析し技術レベルを明らかにした. 3.さらにタイの現地条件に適応し, いくつかの利点を有する伝統的プラウの形態的特質を設計工学的データとして整理した. これらのデータに基づき新しい改良プラウの設計開発にコンピュータデザインシステムの導入を試みた. このシステムの実用化についてはカセサート大学との共同研究を進めつつある. 4.農法展開を見ると, タイとマレーシア両国とも伝統的農法は急速に新しい技術に取って代られつつあるが, その技術的変遷過程には顕著な差異が見られる. 大きくは伝統的に米生産が経済の重要位置を占めるタイでは, 農具や農作業の中に地域の自然環境に適応した様々の伝統的技術や工夫が見られ新しい技術の中にそれらの影響が色濃く反映している. 一方マレーシアにおいては稲作の歴史は古いものの自然的・社会的環境からプランテーション農業が中心に進んだため, すでに工業化がかなり進み労働力の不足と相まって一挙に近代農業技術の移転が進みつつあるといえる. 5.タイにおける特徴としては現地開発技術が地域性と自然環境に適応しつつ多様化していることである. また耕うん作業や収穫作業についても比較的豊富な労働力を生かし得る適正技術の確立が進んでいる. とくに安価な現地製の各種プラウが普及しており, これは大型トラクタ用ディスクプラウからティラー用プラウ, 畜力用プラウや各種代かき用機具と多岐にわたっている. 収穫については北部や東北部においてはマイピープと呼ばれる脱穀用手農具による打穀が行われている一方, 中央平原を中心に国産の投げ込み式スレッシャーが普及している. 6.マレーシアにおける農法展開の特徴はタイの多様化とは対照的にむしろ均一化であり, 特定稲作適地における省力化を目指した技術移転である. すなわち耕うんにおける日本型ロータリー耕うん方式の導入と収穫作業における欧米型大型コンバイン並びに大型乾燥加工施設の設置である. 当然伝統的稲作農具は姿を消しつつある. 一方水田のかんがいについては急速に近代的会工かんがいへと進み同時に圃場での排水改良の必要性が高まっている. すなわち排水問題は海岸線近くの低平地に位置する水田土壌の粘性質と排水先である中川河川の未整備という二つの要素を抱えている. とくに二期作導入の場合収穫と代かき・田植えが同時進行するため排水改良は新らたな課題であり, 学理的基礎作業としては当地のスコール性降雨の水文流出解析が今後必要といえる.
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