研究分担者 |
NAKORNSRI Ni タイ国鉱産資源局, 地質調査部, 主任研究官
八田 明夫 鹿児島大学, 教育学部, 助教授 (40172928)
川辺 鉄哉 千葉大学, 理学部, 助手 (60009389)
石橋 毅 九州大学, 理学部, 助手 (50037264)
坂上 澄夫 千葉大学, 理学部, 教授 (40002521)
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研究概要 |
研究担当者及び分担者の6名は1986年7月から9月にかけ,タイ国中部から北部にかけ野外地質調査を実施した. この調査にはタイ国鉱産資源局地質調査部のスタッフの中から3人の専門家が参加した. 調査地は大きく3地域にまとめられる. すなわち1,LampangーPhayao地域;2,Kok Sam RongーPhetchabun地域;及び3,LoeiーPak Clem地域である. 以下調査概要を述べる. (1)LampangーPhnayao地域:本地域では上部二畳系及び下部三畳系が近接して分布する地域を重点的に踏査した. 特にKhao Doi Pha Phlung地区では二畳系の泥岩中から二畳紀最後期を示すアンモノイド類のPseudogastriocesas sp.Paratilolites sp.nov.(MS)及びParacelties sp.を発見した. この層準より多少上位には石灰岩の小岩体が分布し,この中からは同様に二畳紀最後期を示すブズリナ目有孔虫類や小型有孔虫類が識別された. すなわちColaniella cf.cylinodrica MーMaklay,Paleeatextnlaris sp.,Palaeofrsulinr sp.,Reichelins sp.などである. これらはあきらかに最上部二畳系を代表するPalaeofusulinaーColaniella化石群の要素である. なお当地域内では他に2畳紀最後の四射さんごと思われるWaagenophyllum off.virgalense(Waagen 4 wentzel)や三畳紀後期を示唆する腕足類のSskawairhynchia sp.,Spinfeninoides sp.やMentzelia sp.などが産出し,二畳系〜三畳系の境界付近の生層序を確立するために極めて重要な地域であることがわかった. 本地域は次回の重点調査地域の一つに予定している. (2)Kok Sam RangーPhetchabun地域:本地域にはRat Bun石灰岩(石灰系〜二畳系)のうち主として中部二畳気が広く分布するが,一部には下部二畳気下部統や上部二歓系下部統もみられる. 特にkhaoHin Kling地域には豊富な,フズリナを主とする有孔虫類や腕足類,こけ虫類,さんご類などが主として石灰岩,一部砂岩中に産出する. これら化石群の特徴は各分類群毎に現在評細な古生物学的検討を施しつつある. 本地域からは時代決定に重要な各種フズリナ類が多産するが, その他上部二畳系を示唆するAraxathgris cf.A.araxenois araxensis Gruntなどの腕足類も識別されている. 主として中部二畳紀代石群の要素とその特徴を明らかにすることは二畳紀の中期から最後期にかけてのタイ国を含む東南アジア地域の動物群の変遷史を明らかにし二畳紀の古生物地理を考察する上に極めて重要である. (3)LoeiーPak Chon地域:本地域には主として石灰系やシルル系など二畳系の基盤となる地層が分布する. これらから産出する化石群の検討は北部タイ地域における後期古生代の古地理を考察する上に不可欠である. シルル系に関してはメコン河に近い二地点からさんご類や腕足類を主とし三葉虫類を伴う化石群が識別され,その時代は中期ないし後期シルル紀であることが判明した. 時代決定に有効なさんご化石群には,Heliolites cf.H.banandei(Horenes),H.cf.H.bohemicus Wentzel,Fovosites sp.,F.cf.F.baculoides Bansnde,Rhitziphyllum cf.H.banandeiHeなどが含まれ,腕足類代石にはLeptostroplia sp.などが含まれる. Loei北方のバライト鉱山跡の頁岩からは豊富な内容と数の腕足類代石類化石群が二枚貝や三葉虫化石を伴って産出する. 本化石群にはBracluythynina cf.B..stranguwaysi(de Veneuil)やNeospiritev sp.,Karavankina sp.などが含まれ,時代は後期石灰紀と考察される. なおこれら踏足類化石群の産出する層準から上位のバライト鉱の中からは後期石灰紀のアンモノイド類のgastinoceras?sp.などが産出する. タイ国中・北部では東部から西部にかけて地質時代が新しくなる傾向を把握した. 今回は二畳紀〜三畳系の境界問題の完全な触決を西部において目指し東部から中央部では二畳系下部紀〜中部紀の生層序を,また石灰紀以前の二畳系の基盤岩の生層序を明らかにし,古世代後期〜中生代初期に至る動物群の変遷史と古生物地理を明らかにしたいと願っている.
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